「経産省で、都合の悪いことを隠蔽する資料作成の仕事に翻弄された」
「大きな組織に所属せず、地域で役に立つ仕事で生きて行こう」と、私の店で情報交換をする人たち
通信企業大手のIT技術者だった方は、「業界の限界」を話してくれた。
「国内市場は飽和状態でパイが増えないのに、顧客を奪い合うために熾烈な技術競争をしているんです。コストを下げるため、期日を早めるため、無理難題とわかっていても仕事を下請け業者に押しつけることが当たり前。でも僕はそれが苦手でなかなかできなくて。誰が悪いというわけではなく、みんなで知恵を絞り、汗を流しながら目標に頑張っているだけ。社内の雰囲気も悪くない。それなのに鬱などで休職者が絶えません。結局、誰も得していない。何のために仕事しているのか、わからなくなりました」
この方は会社を辞めて、来月には東北に移住することを決意した。
経産省で働いていた方も訪ねてくる。
「経産省に勤めることが決まった時、世の中を向上させるような素晴らしい仕事に就けると誇りを持って臨んだんです。でも実際は、国会答弁作りで幾晩も徹夜し、都合の悪いことを隠蔽するための資料作成に翻弄されました。私がしていることは嘘を嘘で固めること。世の中に貢献するどころか、世の中を騙して劣化させることに加担する自分に、やりきれない気持ちで耐えられなくなりました」
昨今で言えば、森友学園疑惑や加計学園疑惑でわかるように、安倍首相が自らの口は汚さずに省庁で働く人たちに圧力を掛けて、「あるものをないと言わざるをえない」「できないことをできると言わざるをえない」といったところに追い込んでいるのと同じ類だ。
今、ソーシャルワーカーとして働くこの方は、収入は大きく減ったが、自分の仕事の行為が社会を向上させることにわずかでも役立っていると、充実した様子だった。