参加者をうんざりさせない「研修」運営のポイント

携帯オフもPCシャットダウンも不要

 年間100社、今年は3,000人が参加して、分解スキル・反復演習型能力開発プログラムを実施している。外部団体のセミナー講師を務めたり、大学で講義したりすることも多い。しかし、私は、一切、こうした注意事項の連絡や、私の紹介をお断りしている。そもそも受付を辞退して、私自身が参加者と挨拶して、入場を促す。他の人によってアナウンスしていただくことも辞退して、私自身がセミナーの最初から進行役を務める。  そして、私が最初にやることは、BIGPRだ。「管理職研修の一環で実施するプログラムです(B Background 背景)。トレーナーを務める山口博です(I Introduction 紹介)。本日は、コーチング話法の演習です(G Goal 目的)。時間は2時間(P Period 時間)。ほとんどが話法のロープレですので、のびのびと積極的に取り組んでください(R Role 役割)」と話して、プログラムの本題に入る。  この進行術を体得していただくプログラムを実施していて、よくある質問に、「携帯オフやPCシャットダウンの連絡をしなくてもよいのか」というものがある。その必要はない。トレーナーのファシリテーションやプログラムが魅力的であれば、携帯やPCで内職される率は低下する。そもそも、能力開発は自分自身のパフォーマンスやキャリアに跳ね返るので、プログラムに参加したくなければ参加しなければよいという考え方だ。  私語はしたければすればよい。質問をしたければ適時すればよい。発言者は指名しない。出欠確認は、プログラム実施時の演習シートの回収に代えられる。受付もいらない。席は自由で不都合はない。私のプログラムの参加者からは、「これほど気持ちよく研修に参加できたのは、初めてだ」「ストレスが驚くほどなかった」「やる気が出た」というフィードバックをいただいている。  BIGPRは、会議や研修の冒頭の切り出し方の話法であり、相手を引き付けるコミュニケーションスキルである。しかし、それだけではない、能動性を高める効果も高い、組織をハンドリングするスキルのひとつとしても位置づけられるのだ。 ※「BIGPRのスキル」は、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月。ビジネス書ランキング:2016年12月丸善名古屋本店1位、紀伊國屋書店大手町ビル店1位、丸善丸の内本店3位、2017年1月八重洲ブックセンター4位)で、セルフトレーニングできます。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第36回】 <文/山口博> 【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、リブ/コンサルティング組織開発コンサルティング事業部長。。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある ※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。
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チームを動かすファシリテーションのドリル

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