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欧州連合(EU)で財政状態の良くない国としてPIIGSというのが話題になっていた時期があった。それはポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの5か国のイニシャルを取ったものであった。
この5か国の中で一番早く財政再建を果たしたのがアイルランドであった。それに続いて、ポルトガル、スペインも経済成長が目立つようになっている。イタリアは伸び悩んでいる。そして、ギリシャは依然としてトロイカ(EU、ECB、IMF)からの支援を仰がねばならない状態が続いている。
この5か国の中で、良く比較されるのがポルトガルとギリシャである。両国とも人口規模そしてGDPとほぼ同じ規模であり、しかもトロイカからの支援金を仰いだが、ポルトガルは現在EUの優等生として成長し、片やギリシャは劣等生のままである。GDPで見ると、ポルトガルもギリシャも1900億ドル(21兆円)を僅かに超える規模。人口は両国とも1000万人を少し超えている。更に、両国の政権を担っているのは左派政権である。
では何故、この違いが両国で発生しているのであろうか。両国のここ最近の変化について比較してみよう。
1年半前にポルトガルでは、それまでの右派系の政党、社会民主党による政権をそのまま継続させることを望んでいたアニバル・カバコ・シルバ大統領の前に、社会党のアントニオ・コスタ党首が他左派2党と連立で政権に就くことを提案した。3党の連立で共和国議会の過半数の議席を握ることが出来る。右派政党単体ではそれが出来ないからだ。
カバコ・シルバ大統領は右派出身で、しかも首相経験もある大統領であるが、左派系の3党の連立政権が過半数の議席を確保できるということで安定政権の誕生を願ってそれを承認した。
3党はそれぞれイデオロギーは異なるが、国家の再建ということを主眼に置いて着々と経済政策を3党合意のもとに実施していった。その根本にあるのはトロイカが要望して来た緊縮策からの脱皮である。公共投資の実施を取り戻し、例えば、医療部門における投資を積極的に行った。燃料やたばこへの税金を僅かに上げたが、消費税は13%に値下げた。週35時間制に変更もした。前政権が進めていた公的企業の民営化を中断させた。例えば、ポルトガル航空TAPも政府保有株式を過半数に挙げた。更に、公務員の最低賃金と年金額も上げた。
その結果、<GDPに占める負債は133%>まで上昇しているが、その一方で景気は上向き、<輸出が10%上昇>。しかも、EUが一番重要視している財政赤字が<昨年は2%まで減少し、今年は1.5%、来年は1%まで減少する>と予測できるまでになっているのだ。(参照:「
CTXT」)
失業率も9.8%まで下がり、その減少率は最近数カ月でEUで一番高い減少幅だという。2013年のポルトガルの失業率は16%であったのに比べると、わずか4年でそれを達成している。