このような問題が起きるのは、そもそも個人によってIgG抗体の量が大きく違うからです。健康な人でもIgG抗体が多いケースは普通なため、いくら大量に検出されたからといってアレルギーだとは判断できません。
フードアレルギーテストが間違いを起こす確率は、およそ50%と考えられています。つまり、本当は問題がない食品でも、2回に1回はアレルギーだと判断されてしまうわけです。まさにムダ金ですね。
それでは、遅延型フードアレルギーを見つける方法は他にないのでしょうか?
ここでもっとも参考になるのが、2015年に出た論文でしょう(3)。免疫の専門家チームが過去のデータを洗い直し、「グルテン過敏症」(遅延型フードアレルギーの一種)を診断する最高の方法をまとめたのです。
その方法とは、以下のようなものでした。
1.グルテンを完全に絶った食事を6週間続け、そのうち3週間は専門医の症状診断を受ける
2.6週間でアレルギー症状が30%以上改善しなければ、グルテン過敏症の可能性はない
3.ステップ2で症状の改善がみられた場合は、さらに厳密なテストに進む
4.1週間だけ「グルテンが入った食事」か「グルテンフリー食」のどちらかをランダムで続ける。もちろん、被験者にはどちらの食事をしているかを隠す
5.次の1週間で「グルテンフリー食」を行う
6.最後の1週間で、再び「グルテンが入った食事」か「グルテンフリー食」のどちらかをランダムで続ける
7.「グルテン食」と「グルテンフリー食」で、アレルギー症状に30%以上の違いが出たかをチェック。
8.症状に30%以上の差が認められれば、晴れて遅延型フードアレルギーだと認定!
なんと、ここまでやらなければ「自分がどの食品に弱いのか?」はわからないのです。
実際、最近ではアメリカや欧州の有名なアレルギー学会もELISAの有効性を否定しています(4)。それにも関わらず、いまだIgG抗体のテストを高額で売るクリニックが多いのは、よほどオイシイ商売だからでしょう。くれぐれもご注意を。
1.本来は「食物不耐症」と呼ぶほうが正確ですが、ここではわかりやすく「遅延型フードアレルギー」を使っています。
2.Zeng Q, et al. “Variable food-specific IgG antibody levels in healthy and symptomatic Chinese adults.”(2013)
3.Carlo Catassi, et al. “Diagnosis of Non-Celiac Gluten Sensitivity (NCGS): The Salerno Experts’ Criteria”(2015)
4.AAAAI“THE USE OF IGG AND IGA ANTIBODIES IN THE DIAGNOSIS OF FOOD ALLERGY”(2012)
<文/Yu Suzuki>
【Yu Suzuki】
月間100万PVのアンチエイジングブログ
「パレオな男」管理人。「120歳まで生きること」を目標に、日々健康維持に励んでいる。アンチエイジング、トレーニング、メンタルなど多岐にわたり高度な知見を発信している。NASM®公認パーソナルトレーナー。あまりに不摂生な暮らしのせいで体を壊し、一念発起で13キロのダイエットに成功。その勢いでアンチエイジングにのめり込む。11月11日、初の著書『
一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』(扶桑社)が発売。