メキシコの麻薬カルテルが手を染める「第二のビジネス」とは?

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 メキシコで麻薬組織「カルテル」の主要な商売は麻薬の販売なのは周知のとおりだ。  しかし、この10年余りそれと同等或いはそれ以上の儲けに繋がっているとされている「シノギ」があるのをご存知だろうか?  それはなんと、原油とガソリンの窃盗そして販売である。それはカルテルの麻薬の販売に次ぐ第2のビジネスになっているのだ。  その手口はさまざまだ。パイプラインに抜出し口を設けて盗み、それを闇市場で売るという手口から、カルテル組織「ロス・セタス」や「ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン」のように、メキシコの石油公社ぺメックスの石油タンカー船やタンクローリー車そのものを盗むといった犯行まで行うという大規模犯罪まで拡大している。  中には、2011年に逮捕されたロス・セタスのラウル・ルシオ・ヘルナンデス のように、架空の会社を作って、盗んだディーゼルやガソリンを米国に販売していた奴までいるというのである。 (参照:「Univision Noticias」)

「タピネロス」と呼ばれる裏稼業

 窃盗で一番多いケースはパイプラインに抜出し口を設置して盗む手法である。通常はパイプラインの流れを止めて内圧を下げてから穴を開けて抜出し口を設置するのであるが、窃盗であるからそのような下準備をやっている暇はない。よって、内圧がかかったままでの設置作業となり、極めて危険な作業になる。この作業を専門にしている人物を彼らの間では<「タピネロス」>と呼んでいるが、多くはぺメックス(メキシコの国営石油企業)の従業員だという。  当然ながら、彼らは個々のパイプラインの状態を熟知しており、コントールセンターで感知されないように抜出し口の設置作業ができる技術を備えているのである。そんな彼らを金儲けで誘い込むか、或いは恐喝して内密に窃盗組織に協力させているのである。なにしろ、一般の仕事の<日給は7-11ドル>であるにも関わらず、その作業を見張って監視するだけの仕事でも<日給54ドル稼げる>というのだから、「小遣い稼ぎ」をしたがる連中にはこれ以上うまい話はない。  2005年から2014年の間に39人のタピネロスが逮捕されている。しかし、判決が下って収監しているのは15人だけだという。これもカルテルの影響力が判事にまで及んでいるという証拠である。 (参照:「New York Times」、「Univision Noticias」)  この窃盗が一番多い州はプエブラ、タマウリパ、グアナハト、シナロアとそしてメキシコ自治州である。特に、プエブラ州のアカツジンゴ、パルマル・デ・ブラボ、ケチョラックの3つの町が構成する地域は<「赤い三角地帯」>と呼ばれて、最もこの窃盗の頻発している地域だとされている。 (参照:「Sin Embargo」)
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市民からの呼称は「ロビンフッド」!?
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