需要急増のリチウム。南米でのリチウム覇権を狙う米国と南米産出国の動き

ボリビアの「ブルーオーシャン」を狙うテスラ

 世界から一番注目を集めているのが、世界で最大の埋蔵量を誇るボリビアという「ブルーオーシャン」である。もっとも、ここでいう「ブルーオーシャン」は海ではなく、湖、というよりも「ウユニ塩湖」である。  ただ、先述したとおり、この土地はまだ開発されていない。  というのも、2006年から政権に就いているエボ・モラレス大統領はアイマラ族という先住民出身であることから南米の富が嘗てスペイン人によって略奪されたという意識がより強い。コロンブスはアメリカ大陸発見者ではなく、侵略者だという意識が先住民族の間で根付いているのだ。  しかも、彼はウーゴ・チャベスの影響もあって反米意識が鮮明で、南米でのこれまでの米国支配に極力反対している。その影響から、彼の政権では国家の基幹産業に成りうる可能性のあるものは全て国有化するという政策を取って来た。  リチウムを埋蔵するウユニ塩湖の開発についても国有化しており、その開発は自国資本に限定するとして、外国からの資本参加を極力避けている。  リチウムへの需要が増大し価格が高騰するにつれて、国家事業として<塩化カリウムとリチウムの産出に9億ドル(990億円)>を投資して、<2018年から生産化>を目指すとした。(参照:『Sputnik News』)  ボリビア政府のこの動きを見たテスラモーターズは、ボリビアで<バッテリーの生産工場を建設したい>という希望を同政府に伝えたという。同じような申し出が<ロシア、オーストラリア、日本を含め5社からあった>ことも政府は公表した。(参照:「Revista Norte」)  エボ・モラレス大統領を説得するには現地生産を行うという条件でないと、彼が外国からのリチウム開発の申し出を受けいれることは先ずないだろう。産出したリチウムをそのまま外国に輸出するというプランでは彼を説得するのは今の処非常に難しいのが現状である。  この様な事情から、ボリビアについては米国による支配はモラレス政権が2020年まで続く限り非常に難しい。 <文/白石和幸 photo by Mauricio Navarrete Contreras via flickr(CC BY-SA 2.0) > しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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