このエボ・モラレス大統領が警戒していることはいま、アルゼンチンとチリの身に降りかかりつつある。つまり、米国の手が忍び寄っているということだ。
アルゼンチンに昨年12月にマクリ大統領が誕生したことによってそれが表面化した。彼は大統領選挙戦中から4か年の「ベルグラノ計画」を掲げていた。その主要目的はアルゼンチンの北部地方のインフラ開発や教育向上を目指すことである。その北東地方はブラジル、パラグアイ、アルゼンチンの3か国が国境を接する地域で、そこは淡水湿地帯という「水資源の豊富な地域」なのである。と同時に北西部地方はチリとボリビアと国境を接し、そこは「世界のリチウムが終結した豊富な塩湖地帯」である。
そして、この「ベルグラノ計画」の一貫として表向きはテロ活動や麻薬の阻止など安全確保を目的に米国がこの地域で米軍基地を設置することをオバマ前大統領と合意に達したのである。これが意味することは、米国は淡水地帯そしてリチウムの塩湖へのアクセスが可能になるということである。また、現在未開発のボリビアのウユニ塩湖についてもアルゼンチン側からボリビア政府を牽制できる体制になることである。
米国企業のアルゼンチンでのリチウムの産出は主にFMC Corp、 Lithum Americas、Albermarle Corpが開発を進めている。特に、注目されるのはAlbermarle Corpで、同社は世界のリチウム生産量の33%を占めている。
アルゼンチンでは米国企業以外に豊田通商が米国とカナダ資本のOrocobreとジョイント・ベンチャーでフフイ塩湖からリチウムを産出している。また、三菱商事もリチウム開発を進めている。中国、韓国、フランスの企業なども開発に参加している。
米国との関係強化という意味で、マクリ大統領はオバマ前大統領との間で世界で最南端の都市ウシュアイアにも米軍基地を設けることで合意している。この都市は地政学的に南極、大西洋、太平洋の動きを監視できる重要な拠点になっている。
現在世界でリチウムの産出量が一番多いチリに目を向けると、同国でのリチウムの産出はSQMとRockwoodの2社の寡占化が続いている。SQMは半官半民企業で、一方のRockwoodはアルゼンチンでリチウム産出を支配しつつある米国Albermarleの100%子会社である。そして、世界で3番目の規模の米国FMCもチリでの可能性を探っているという。
勿論、世界の40%のリチウムを購入しているとしている中国も、3社がチリでのリチウム産出の可能性を探っている。