「のぐそ(野糞)」を続けて43年、その本質は「命の循環」

トイレットペーパーよりも拭き心地のよい葉っぱも多い

のぐそに適した葉っぱやキノコ

 現状ではのぐそにともなう法的リスクは避けがたい。では震災や豪雨などの災害で、電気や上下水道などの社会インフラが停止したとき、うんこはどうすればよいのか。  今年2月に公開された映画『サバイバルファミリー』(矢口史靖監督)は、電気が消失した世界で、家族が都市部から田舎への脱出を試みる様子を描いた作品だ。電気が止まるとポンプも動かず水で流せない。劇中、排泄物であふれた公衆トイレは悪臭と汚れが凄まじく、家族は用を足せなかった。その描写は、大規模災害での被災者の姿とも重なって見える。 「災害時でも心地よくうんこする究極の解決策は『葉っぱのぐそ』です」と伊沢さんは提唱する。その名の通り、野草や木の葉をトイレットペーパーの代わりにして行う。分解しにくい紙と違い、「葉っぱは早く自然に還り、しかもどこにでもある。紙以上に拭き心地がよいものも多い」(伊沢さん) 「タモリ倶楽部」でも、出演者がのぐそに適した葉っぱの触り心地に感嘆していた。  さらに仮設トイレや簡易トイレでは排泄物の量が膨大となり、その処理が課題となる。ところが、のぐそは土に埋めれば臭いもせず、うんこも1人分の量で済むため分解も早い。 「それだけで処理が完了し、他の生物のごちそうとなって自然を豊かにする」と伊沢さんは力説する。  無論、土に埋めもせず、しかも人目につくようなやり方には、伊沢さんも否定的であることは言うまでもない。これまでタブー視されてきたのぐそだが、災害時のトイレの方法などとして注目されることをきっかけに関心が高まり、議論が深まる可能性はある。 <取材・文/斉藤円華 写真/糞土研究会>
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うんこはごちそう

うんこから見えるいのちの循環