筆者はサモイロワさんがロシア側から選出された際、今年のユーロビジョンでは特にふさわしい人選かもしれないと思いました。
今年の開催地がウクライナであるからです。
ただでさえ政治色が強くなっているユーロビジョン、開催地がウクライナとなると、今年はロシアへの風当たりはさらに強いものになるでしょう。例年以上にロシア代表へのブーイングが想定されるわけです。
しかし、障害を患いながらも必死に歌い、歌唱力を披露するサモイロワさんがロシア代表であれば、政治の域を超えて、音楽の域での感動を聴衆に与えることができるかもしれないと思いました。
その意味で、ロシア、ウクライナ両国の緊張が和らぐ瞬間というものを期待していました。ただ、残念ながら、この可能性はほぼゼロになったといえます。
一方、今回のサモイロワさんロシア代表選出は、ロシアの計画通りだった可能性、これも考えられます。サモイロワさんがユーロビジョンに出場できない理由は、クリミア半島への許可なき訪問。
これを聞いた際、同時に浮かんだのが、もしかしたらロシアはこの事実を知っていて、あえてサモイロワさんを選んだのかもしれないという考え。
昨年はクリミア半島絡みの曲を歌った歌手が優勝。今年はウクライナというアウェーの地での開催。
もしかしたら、ロシアは初めから、ウクライナでのユーロビジョンに出場する気はゼロだったのかもしれません。すべてはロシアの想定内だった可能性、これは決して否定できないでしょう。
<文/岡本泰輔>
【岡本泰輔】
マルチリンガル国際評論家、
Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。