車椅子のロシア人歌手がウクライナ入国禁止。ユーロビジョンは欧州対ロシアの政治的葛藤の場に

 例えば、2014年年度の優勝者は、「ひげ面美人」として知られるオーストリアの歌手、コンチータ・ウルストさんでした。  ウルストさんは、普段は男性としての本名を名乗っています。ただ、ステージ上は別。  ユーロビジョン優勝時の時もそうですが、ひげを生やしながらもきれいなドレスを着て、長いまつ毛に長髪。「女装」しているのが特徴的な歌手です。そんなウルストさんの優勝は、プーチン大統領に対する非難のメッセージとも当時言われていました。  というのも、プーチン大統領は反同性愛法を成立させたことからも分かるように、基本的に同性愛に不寛容な人物だからです。  ウルストさんが優勝した2014年は、クリミア併合問題で揺れた年でもあります。2014年のロシア代表は双子姉妹でしたが、彼女らが歌った時も、聴衆から大きなブーイングが起こっています。  ユーロビジョンの構図としては、政治とは関係ないといいつつも、実際のところ、  ウクライナを擁護するヨーロッパVSロシア  という構図ができつつあるわけです。  今年の開催地はウクライナですが、これは、昨年16年にウクライナ代表のジャマラさんが優勝したから。ジャマラさんは、クリミア半島から先住民族であるタタール人が追放されたことに関する曲を歌いました。  一番政治的に議論が起こる、クリミア半島の歴史を歌った人物が優勝しているわけです。ロシアが嫌悪感を表すのは当然ですし、ここでも上記のヨーロッパ対ロシアの構図を見ることができます。
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期待されていたサモイロワさんではあったが……
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