新井杏里氏
つまり、「評価とフィードバック」という作業を余分な「負荷」として追加するではなく、通常業務の一環に組み込むということだ。
実際に、当社のクライアントにも評価頻度を増やした企業は何社か存在するが、しばらく経過すると、マネージャーが日常のマネジメントフローに組み入れて実施できるようになった。うち1社で導入数年後にアンケートを採ると、およそ8割の社員が「今の頻度が良い」と回答した。
別に人事主導でなくとも、現場部門が自部門で最も効果のあがる評価スパンを試行錯誤してみてもいい。そして、それを人事に提案してはどうだろうか。腰の重い人事部門でも、社内で成功事例があれば腰を上げるかもしれない。
随時評価を賃金・賞与に反映する方法については「年次査定」の是非とともに別途議論が必要だ。しかし、各現場の事情と評価制度との整合性を取る役割から人事部門が解放され、評価結果をどう活用するかという検討に集中できるのは大きなメリットではないか。
成果主義評価の運用は手間がかかる。上司にはフィードバックスキルが求められる。しかしフィードバックの頻度が上がることで現場リーダーが鍛えられ、組織の成果創出スピードが上がる。どうせ手間がかかるなら、現場マネジメントの役に立つ運用をしたほうがよい。
評価もフィードバックも、主体者は人事ではなく現場のマネージャーである。人事評価を現場の手に取り戻すことが、次世代の評価制度の潮流となるのではないか。
<文/新井杏里(リブ・コンサルティング)>
新井 杏里(あらい あんり)●株式会社リブ・コンサルティング。組織開発コンサルティング事業部チーフコンサルタント専門は、人事評価・賃金制度構築・改定、人事制度統合、女性社員活用。京都大学経済学部卒