東日本大震災から6年――変化を遂げるイオンとセブンアイの「商業復興」

小型店の「身軽さ」を武器に「コンビニ主導による復興」掲げたセブンアイ

 イオングループが被災地の各地でショッピングセンターの出店を行っているのに対し、セブンアイグループの商業復興を牽引しているのは意外にもコンビニエンスストア「セブンイレブン」だ。  セブンイレブンは、震災発生から約1ヶ月後の4月13日から津波被害を受けた宮城県仙台市若林区や多賀城市での移動販売を開始。翌5月には南三陸町と気仙沼市で「セブン銀行」の移動ATMサービスを開始し、その後も被災各地に仮設店舗を設けるなど、「コンビニ主導」による被災地支援を行った。  さらに、震災から2年後の2013年8月には、福島第一原発に近い福島県楢葉町にもセブンイレブンが新規出店した。この出店は原発事故からの復興を目指す地元自治体の誘致によるもので、当時原発事故により殆どの住民が避難していた同町ではスーパーマーケットの誘致は難しかったものの、コンビニエンスストアであれば復興工事の作業員なども気軽に利用することができるため、出店が実現したという。  また、セブンイレブンは震災の復興が進むにつれて、2014年にはそれまで店舗網のなかった岩手県沿岸部・三陸地方への出店も開始しているほか、宮城県南三陸町などでは土地の嵩上げが終わったあとに建設された「新たな中心市街地」にも積極出店をおこなうなど、「コンビニならではの身軽さ」を武器に、復興に呼応するかたちで急速に店舗網を拡大している。

南三陸町志津川に昨春開業したセブンイレブン志津川十日町店は、仮設店舗から本設店舗への転換店。土地嵩上げ地区では初のコンビニ新規出店となった

 一方で、例外的にスーパーの「イトーヨーカドー」と傘下の「ヨークベニマル」(本社:郡山市)による被災地支援が行われている地域もある。それは、原発事故により全域が避難指示区域となっていた福島県富岡町だ。  富岡町では、今年4月1日に避難指示の一部解除を迎える。これを受け、イトーヨーカドーは昨年9月から移動販売サービス「イトーヨーカドーあんしんお届け便」を開始した。  移動販売は今春にグランドオープンする予定の複合商業施設「さくらモールとみおか」の駐車場で行われており、一時帰宅している住民や復興工事作業員などの購買ニーズに応えている。

4月にヨークベニマルが出店する「さくらモールとみおか」。 移動販売から実店舗への円滑なバトンタッチが実現する

 実は、この「さくらモールとみおか」には2017年4月にヨークベニマルが出店することが決まっている。セブンアイは、スーパー開業を前に移動販売をおこない、グループ企業同士の円滑な「バトンタッチ」をおこなうことで地域の商業復興を後押しするとともに、帰還を目指す富岡町民の信頼を得たい考えだ。
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イオンとセブンアイの6年間
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