東日本大震災から6年――変化を遂げるイオンとセブンアイの「商業復興」

「移動店舗」と「仮設スーパー」からはじまったイオンの被災地支援

震災直後は避難所となっていたイオンモール石巻。 現在は震災当時の面影もなく賑わっている

 イオングループにおける商業復興の旗振り役となったのは、東北地方を拠点とする総合スーパーの「イオンスーパーセンター」(本社:岩手県盛岡市)とホームセンターの「サンデー」(本社:青森県八戸市)だった。  イオンスーパーセンターは震災発生から約1ヶ月後の4月21日にサンデー大船渡店(岩手県大船渡市)駐車場で4tトラック2台による移動販売を開始。紙おむつ、食料品など約160品目を取り揃え、津波災害からの復興を願う市民の生活を支えた。  その後を追うように、イオンリテール(本社:千葉市)が大船渡市と陸前高田市に売場面積約200㎡の仮設スーパーを出店。さらに、これらの仮設スーパーを拠点に仮設住宅への移動販売も開始することで、被災直後における購買環境の整備に貢献した。  また、ホームセンターのサンデーでも、復旧・復興に従事する人々のニーズに応える品揃えを特徴とした仮設店舗「サンデー大船渡野々田店」を2012年5月に出店し、2017年3月現在も営業を続けている。

プレハブの仮設店舗で営業するイオン系ホームセンター「サンデー大船渡野々田店」

復興の進展で「仮設店舗」から「ショッピングセンター」にシフトするイオン

 震災から3年が経過した2014年になると、イオングループの被災地戦略も変化を遂げた。  この頃になると、イオン系列の仮設スーパーは相次ぎ閉店し、仮設店舗と入れ替わる形で「本設」の大型ショッピングセンターの出店が次々と行われるようになったのだ。  そのなかでも代表的なものとして挙げられるのが、2014年3月に開業した大型ショッピングセンター「イオンタウン釜石」だ。同店は津波で大きな被害を受けた釜石市中心部・大町地区の復興の後押しにしようと釜石市が誘致したもので、イオンスーパーセンターを核に56の専門店が出店。岩手県沿岸部で最大規模を誇るショッピングセンターとして、現在も被災地広域からの集客が絶えない。  また、同年7月に陸前高田市郊外に開業した中規模ショッピングセンター「イオンスーパーセンター陸前高田店」には地元の産直市場や郵便局(敷地内)が入居した。陸前高田市では中心市街地の殆どの建物が流出した上に土地の嵩上げ工事も長期化しており、娯楽施設などが少ない状態だ。それだけに、同店は地域を代表する複合施設として「住民の憩いの場」にもなっている。  震災発生後から数年間は岩手県沿岸部の商業復興に注力してきたイオングループだが、近年は原発事故被災地域の復興・帰還住民の増加も後押しとなり、福島県沿岸部への出店にも積極的になっている。  2016年3月に福島県広野町で開業した公設のショッピングセンター「ひろのてらす」には、核店舗として「イオン広野店」が出店した。官民が協力するかたちで開設されたこのショッピングセンターは「街の復興の象徴」の1つとなっており、原発事故から住民の帰還が進むにつれてその存在感は日増しに大きくなっている。  さらに、2018年夏には、いわき市の沿岸部・小名浜地区に福島県初となるイオンモール「イオンモールいわき小名浜」が開業する予定だ。福島県全体を見ても最大級の商業施設となる同店は、津波からの復興を願う地域の集客拠点施設として、そして災害時の避難基地としても、大きな期待が寄せられている。
次のページ 
「コンビニ主導による復興」掲げたセブンアイ
1
2
3
4