「市民の勝利」である朴槿恵大統領罷免を、中国官製メディアはなぜ異例の大きさで報じたのか?

『人民日報』電子版は朴槿恵大統領失職の結果を喜ぶ市民の写真を掲載

 韓国の朴槿恵大統領が弾劾裁判で失職した10日、日本の各メディアは速報で伝えた。中国でも官製メディアが電子版で民主主義政治関連では異例の速報で伝えた。地方紙やインターネットメディアなど非官製メディアは、朴槿恵氏が罷免されるまでの経緯なども写真付きで大きく報じるなど関心の高さを示した。  電子版で報じた『人民日報』は、翌11日の紙面12ページの中で、朴大統領罷免については一切触れず、15日まで開催中の全国人民代表会議についての記事がトップを飾るなど官製メディアと非官製、さらに官製メディアでも紙面と電子版にそれぞれ内容に差が生じ始めているようだ。  先月の金正男氏殺害事件でも中国政府は2月15日の定例記者会見で公式見解を出さなかったため、官製メディアは、ほとんど触れず、金正男氏の名前も出していなかったが、非官製メディアは、事件直後からゴシップに近い内容も含め金正男氏の名前を盛んに報じていた。 『中国中央電視台』(CCTV)は、2月16日夜のニュースで金正男氏の名前を初めて登場させ以降は繰り返し殺害男性=金正男氏として報じている。『新華社通信』や『環球時報』を含めた官製メディアは、中国政府の意向を強く反映させた政府機関紙と位置づけられている。しかし、最近では、非官製メディアに引っ張られるように数日遅れで報じるようなケースが多々見られるようになっている。  中国官製メディアが流す海外ニュースは意外と多岐にわたっており、政治関連も多い。その中でも特に政治家のスキャンダルなどを好んで取り上げる傾向がある。安倍首相が関連を追及されている森友学園問題や大阪府が不認可にしたことなども人民日報が伝えている。他には海外の事件や事故などを意外なほどタイムリーに伝えることも多い。しかし、選挙については、センシティブなようで扱いが小さい。昨年11月のアメリカ大統領選挙についてもトランプ氏が新大統領に当選。習近平国家主席が祝電を送ったくらいの結果を伝える程度だ。官製メディアは、政府批判のブーメランとなってしまいそうな内容を報じないように注意しているからだろう。
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中国官製メディアが韓国の「政権瓦解」を報じた理由
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