東日本大震災から6年――復興のカギは「商店街」?! 商店街受難の時代、その集客策とは

イオンと共生、住宅併設……集客確保はあの手この手で

 仮設から本設への移行も早々に、厳しい競争に直面することとなる復興商店街。しかし、計画段階からの工夫によって集客獲得のハードルを乗り越えようとする動きもある。  岩手県釜石市に2014年12月に開業した「タウンポート大町」は、2014年3月に地元の誘致で開業したショッピングセンター「イオンタウン釜石」のすぐ隣に出店。イオンとの共同イベントの開催やイルミネーションの点灯など、本来であれば商店街の「敵」にもなりかねない大型ショッピングセンターとの共存を図ることで、広域からの集客確保に努めている。

釜石市の復興商店街「タウンポート大町」は、大型商業施設「イオンタウン釜石(右)」のすぐ隣に出店。イオンとの合同イベントなどを行うことで集客する

  また、宮城県気仙沼市で今春の開業を目指して工事が進む「南町2丁目地区共同化事業(仮称)」では、24店舗の商店と24戸の災害公営住宅を複合した5階建てビルの低層階(1-2階)に商店街が設置される。この下層階の商店街は、高層階(3-5階)で暮らす住民の消費の場にもなることで、文字通り「足元商圏」を固める狙いだ。

気仙沼市南町で今春開業予定の複合施設では低層階に商店、上層階に住宅が入居。 住民を日常的な消費者とすることで足元商圏を固める

 今回オープンした南三陸さんさん商店街の周辺には、こうした大型ショッピングセンターがある訳ではなく、また、足元商圏もそれほど大きくはない。  その一方で、同商店街は、震災復興の過程でかさ上げされた土地に建設されているうえに、震災遺構として保存されている「南三陸町防災対策庁舎」がすぐ近くにある。そのため、商店街への安定した集客、ひいては商店街を核とした新たな街の発展を目指す上では、「復興ツーリズム」で被災地を訪れる客を商店街へと誘導することが欠かせないものとなる。南三陸町や商店街では、語り部プログラムのなかで商店街での買い物を組み込んだプランを設けるなど、観光客を取り込むための施策もおこなっていく方針だという。

かさ上げ造成地に建設されたさんさん商店街(左)と南三陸町防災対策庁舎(右)。 街の核となる「商店街」を維持するためには、こうした震災遺構訪問者の集客も欠かせないものとなる

 東日本大震災の発生から6年を迎え、ようやく「商業復興」の兆しが見えてきている被災地。もちろん、こうした新商店街にとっての一番の「成功の鍵」は、「地元住民に末永く愛される施設となれるかどうか」であることも忘れてはならない。  街の新たな核となる商店街や新施設の集客戦略の成否は、今後10年、20年後の街の賑わい自体をも大きく左右することになるであろう。 参考: 岩手日報,「仮設商店街、集客に正念場 県内『減少』68%実感」、2016.3.18 河北新報,「気仙沼内湾活気再び」,2016.09.09 岩手日報,「大船渡の本設商店街が着工 震災越え来春オープン」,2016.10.04 河北新報,「南三陸の新商店街「ハマーレ歌津」に」,2017.02.10 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」 ※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中 ・ニトリ渋谷店、2017年6月ごろ開店-丸井・シダックス跡に「都心初」単独旗艦店ライザップ、ジーンズメイトを子会社化北千住マルイ、12月9日リニューアルオープン――レストラン街など全69店舗を刷新
1
2
3