気付かれにくく、すぐ撃てる――北朝鮮の新型ミサイル「北極星2型」の脅威

発射の探知を難しくする「コールド・ローンチ」

コールド・ローンチで発射されるロシアのミサイルの解説図。北極星2型も基本的には同じような仕組みで発射される Image Credit:ISC Kosmotras ---

 今回の北極星2型の発射試験において、もうひとつ注目されているのは、ミサイルの打ち上げ方法である。  スカッドやノドン、ムスダンなどのミサイルは、移動式の発射台に立てられた状態で、ミサイルのエンジンに点火、噴射して飛んでいく、「ホット・ローンチ」という方法を使っている。ホット・ローンチという言葉を使うと変わった仕組みに思われるかもしれないが、要は他のロケット打ち上げでもよく見る、標準的な打ち上げ方法である。  一方、北極星2型は、まず大きな筒の中にすっぽり収まった状態で立てられ、そして筒の底で発生させたガスの圧力によって空中に放り出され、そこで初めてミサイルに点火し、飛んでいく。ホット・ローンチと違い、発射時に”熱い”ロケット噴射を伴わないことから、こうした発射方法を「コールド・ローンチ」と呼ぶ。この方法は、米ロをはじめ、世界の大半の弾道ミサイルが用いており、また潜水艦からミサイルを発射する技術も、基本的にはコールド・ローンチと同じである。  コールド・ローンチの利点は、発射時に熱い噴射ガスが出ないため、敵からの探知を少し遅らせられるということにある。  米国などは、宇宙空間に配備した早期警戒衛星でミサイルの発射を探知するが、その探知には赤外線を使っている。赤外線は温度が高いほど多く出るため、たとえばミサイルの発射場所と思われるところなどで高い温度を探知すれば、それを「ミサイルの発射だ」と見なすことができる。  ホット・ローンチの場合、ミサイルのエンジンが噴射して発射される上に、さらにその燃焼ガスは地面にあたって周囲に広がるため、早期警戒衛星から探知しやすい。一方、コールド・ローンチだと発射後に噴射を開始するため、探知したときにはすでに飛び始めており、さらに地面にガスが広がらないため、探知もやや難しくなる。  またコールド・ローンチには、発射時にミサイルが入っている筒などが噴射ガスで炙られないため損傷しにくく、装置をそのまま、すぐに再使用できるという利点もある。

初めて姿を表したキャタピラ式の移動式発射台

 また、移動式発射台そのものにも特徴がある。  これまで北朝鮮は、陸から撃つミサイルの発射台に、装輪式(タイヤ)の移動式発射台を用いていた。しかし今回の北極星2型では、戦車のような履帯(いわゆるキャタピラ)を使った発射台が使われた。  履帯を使う移動式発射台は珍しいものではなく、ソ連などで実際に運用されていたが、その目的はタイヤでは走行できない場所を走り、山の中などから撃てるようにするためと考えられる。  一説には、米国は北朝鮮の領内にある、ミサイルの発射が可能な場所、たとえば広場やそこにつながる道路、あるいは道路そのものをほぼすべて把握しているといわれており、北朝鮮にとっては、いくら事前に隠しとおせても、発射準備を始めた段階ですぐにその動きを察知されることになる。  しかし山の中などは例外なため、この移動式発射台で道なき道を進み、どこか適当なところから発射すれば、発射するその瞬間まで、動きを察知されにくくなる。言い換えれば、ある程度開けた平らな場所であれば、すべて発射地点として利用できることになる。
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量産とICBMへの進化に注意
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