しかし大事なことは、設備ではなく、外交上の問題だ。日本が何かを北朝鮮と「共催」するとは現時点では限りなく不可能に近い。そもそも今の外交状況では、韓国や中国との共催すら難しい状況なのだ。
視点を変えてみた場合、韓国と北朝鮮、中国と北朝鮮、韓国と中国はどうか。
こと韓国に関して言えば、大韓サッカー協会の鄭会長は、財閥・現代グループの創始者である故・鄭周永(チョン・ジュヨン)氏の家系であり、今は現代産業開発の会長をしている。現代グループと北朝鮮との繋がりは強く、韓国に北朝鮮融和派の新たな大統領が立てば、南北の政治的なムードも一気に改善される可能性は高い。
中国と北朝鮮は、様々な問題を抱えつつもやはり「同盟国」であり、韓国と中国の関係も現時点ではTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備の問題で一時的な混乱はあるものの、日中関係ほどはややこしくない。
ある意味、日本サッカー協会が腹案として抱えている「日・中・韓の共同開催」の実現性よりも、中国・韓国・北朝鮮の共同開催の方が、話がまとまりやすいかも知れない。
日本サッカー協会としては、そのような事態だけは、絶対に避けたいところではあるが。
ちなみに2030年のFIFAワールドカップは、南米サッカー連盟も、ウルグアイやアルゼンチン、チリなどへの誘致に積極的で、開催地に関しては2021年頃には決まるとされている。
<文・安達 夕>