消費者の“ホンネ”をあぶり出す表情認識AIは、売れる広告を作る有力なツールになりうる

選挙の投票行動にも表情認識AIが応用できる

 他にも表情認識AIが投票行動の予測にも使えるのではないかと研究が進められています。政策について演説している政治家を見ている視聴者の表情を計測した研究があります(McDuffら,2013)。  後に選挙に勝利した候補者の演説を視聴している視聴者の表情からは、多くのポジティブ表情が観察されたのに対し、選挙に負けた候補者の演説を視聴している視聴者の表情からは、多くの嫌悪や軽蔑表情が観察されたことがわかりました。  より興味深かったのは、嫌悪や軽蔑表情を浮かべている視聴者はその「候補者を支持する」と言葉では表明していたのです。つまり表情と言葉とが一致していないということです。  選挙演説に限らず、会議やミーティング、多数の人々が関わる交渉の席で表情認識AIを用いれば、コミュニケーションの淀みや誤解、ネガティブ要素を”見える化”し、望まれる結論へと結果を方向付け出来るようになるかも知れません。  参考文献 McDuff, D., Kaliouby, R., Cohn, J. and Picard, R. Predicting Ad Liking and Purchase Intent: Large-scale Analysis of Facial Responses to Ads. Transactions on Affective Computing, IEEE, 2014. McDuff, D., Kaliouby, R., Kodra, E. and Picard, R. Measuring Voter’s Candidate Preference Based on Affective Responses to Election Debates. Proceedings of IEEE Conference on Affective Computing and Intelligent Interaction (ACII), 2013. Humaine Association Conference on. IEEE, 2013, pp. 369–374. <文・清水建二> 【清水建二】  株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマの監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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微表情を見抜く技術

無意識の感情の表われ「微表情」を読み取ることで、誰でもコミュニケーションの達人になれる!