元・阪神の名物選手の経営論。引退後のモデルケースを作るために必要なこと【アスリートのセカンドキャリア考察】

「自分にとってはプロスポーツのほうが楽だったかもしれない」

 もっとも、「酒美鶏 葛城」も順風満帆な道を辿ってきたわけでない。オープン時は、テレビを始めとするマスコミの紹介や元同僚選手達の訪問もあり、軌道にのっていた。だが、オープン後数ヶ月が経つ頃には、客足は若干遠のき、地元思考へと切り替えたことのターニングポイントとなる。 「よく『プロスポーツの世界は厳しい』と言われますが、僕からするとお店を運営するほうが大変でした。プロは年間で生活が保証されていますが、お店だとお金を稼がないと、今日明日に死ぬかもしれない。より厳しい競争社会だと思いますし、引退後に『あー、プロって楽だったんだな』と痛感しました」。  また、葛城は店主となった現在、現役時代に感じることがなかった新たな感情が芽生えたという。 「プロ野球の世界では喜ばせる人の数は多い。でもそこは、1対1ではないんです。個人的には、お店に来ていただいたお客様と話し、『美味しかった、また来ます』と面と向かって声をかけてもらえるのが言葉では言い表せないくらい嬉しかったんです」
次のページ 
自身が成功例となり、野球選手の地位向上を目指したい
1
2
3