とても簡単なことだが、実は、1点、慣れるまでの間は陥りやすい罠がある。この罠に陥ると、アクションプランの実効性が高まらない。それは、書き出したアクションが自分自身の行動内容になっていなかったり、チームや他のメンバーが行動することになってしまっていたり、自分の行動と他のメンバーの行動が峻別できていなかったりすることだ。
また、具体的な行動ではなく抽象的な概念や目的が記載されている事例も演習を実施しているとよく目にする。「顧客の満足を高める」ということは大事なことだが、顧客という表現も広範囲を指し、満足を高めると言う表現も抽象的だ。「○○株式会社の○○部を訪問し、導入商品の不具合の確認をする」(その結果、顧客の満足度を高める)という記述をする。同様に「売上を伸ばす」という内容は目的だ。「○○会社の○○部を訪問し、○○の提案をする」(その結果、売上げを伸ばす)という記述をする。
「抽象的に書くな」「具体的に書け」「自分のアクションを書け」といくら指示をしたり、掛け声を飛ばしたりしても、書く側はピンとこないものだ。「わからないメンバーが悪い」といくらメンバーの能力に出来ない理由をこじつけようとしても、出来るようになるわけではない。このように、自身の行動を具体的に書くと言う事例を用いて、実際に書き出していく演習を反復していくことが、出来るようになる早道である。
まずは、自分自身がアクションを書き出した付箋を、自分で見直して、自分自身のアクションになっていなければ、その付箋を破棄して、別の付箋に記入し直す。それを行うのは一回だけだ。それでも自分自身のアクションの記述にならない場合は、それ以上、自分で見直すことはやめて、他のメンバーが書き出した付箋の内容を見る。そして、参考にする。そのために演習が役に立つのだ。
難しく詳細なアクションプラン策定シートを使わずに、わずか5分で自分自身の具体的なアクションを書き出すこと……これが、実効性の高いアクションプラン策定をするための第一歩なのである。
5分間でアクションプランの洗い出しをした上で、次の10分間で、洗い出したアクションの優先順位付けを行う。優先順位付けの方法については、次回の記事で紹介させていただきます。
※「分解スキル・反復演習のスキル」は、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月。ビジネス書ランキング:2016年12月丸善名古屋本店1位、紀伊國屋書店大手町ビル店1位、丸善丸の内本店3位、2017年1月八重洲ブックセンター4位)で、セルフトレーニングできます。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第28回】
<文/山口博 photo by
kulecanbazi via pixabay(CC0 Public Domain )>
【山口 博(やまぐち・ひろし)】株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある
※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。