【森友学園問題】塚本幼稚園、保護者が語った呆れた実態

「先代の頃とはえらい違い」と近隣住民も嘆く現状

「そりゃやめるやろ。むちゃくちゃやもん」と話してくれたのは、塚本幼稚園の近隣住民の一人だ。「先代の頃とえらい違いや。あそこの娘さんがあんな人やからな。もうすっかり違う幼稚園やで」  この近隣住民が「あそこの娘さん」と呼ぶ人物こそ、先ほどの「直筆手紙」を書く籠池諄子副園長だ。旧姓は森友。籠池泰典理事長と結婚し姓を改めた。泰典氏はいわば「マスオさん」だ。 「もうな、最近はむちゃくちゃやで。ついこないだも、道の真ん中で、あそこの娘さん、大声で幼稚園の先生を叱責してたわ。子供ら見てる中でな。かわいそうでしゃあなかった」  前出の退園保護者の証言といい、近隣住民の証言といい、にわかに信じ難い証言ばかりだが、数々の証言者の話す内容に相矛盾するところはない。また、「直筆手紙」をはじめとするさまざまの資料は、証言内容を全て見事に裏付けている。資料や証言に基づく限り、「これは事実だ」と認めざるを得ない。  しかし、もしこうした証言が事実ならば、誰かが地元の教育委員会なり大阪府教委なりに苦情を申し立てるはずではないのか? 「もちろん市にも府にも言いましたよ。でもね、行政の人は『私学』であることを盾に積極的に動いてくれないんですよ」と、前出の退園保護者Aさんは語る。

「被害者の会(仮)」の設立に向け、弁護士と協議する元保護者たち

 行政にも見放された塚本幼稚園退園保護者たちの我慢は、そろそろ限界に達しようとしている。彼女たちは近々、専門家の助言を仰いで「退園者の会」を結成する予定だ。  これまでも塚本幼稚園の退園保護者たちは、ネット上などで塚本幼稚園の実態を告発し続けて来た。だが、こうした声に対して森友学園は真摯な対応を示そうとはしない。むしろ、公式WEBサイトに「インターネット上での当園に対する誹謗・中傷記事について」と題した文章を掲示し「投稿者は、巧妙に潜り込んだ韓国・中華人民共和国人等の元不良保護者である」と、ヘイトまがいの文言ではねつけてきた。誠実さのかけらもない対応と言わざるを得ないだろう。

退園保護者を「韓国・中華人民共和国人等」(現在、同園のサイトトップから行けるリンクは修正版)と決めつける塚本幼稚園の声明文

 いや、「ヘイトまがい」という言葉は生ぬるいかもしれない。副園長は実際に、「私は差別はしませんが、韓国人・中国人は嫌いです」と明記した「直筆手紙」をしたためたことがある。しかも、手渡す相手が元韓国籍の保護者であることを知った上でだ。もうこれは明確に「ヘイトスピーチ」というしかない。  こうして考えると、大阪府の対応が不思議に思えてくる。なぜ大阪府は、ここまで運営実態が酷い森友学園に、小学校の設置認可を与えたのだろう?  確かに今回の大阪取材は、朝日新聞が報じた森友学園の土地取引に関するスクープに端を発するものだ。だがひとまずの取材を終えた今の私には、土地取引の闇よりも、「森友学園のあり方」そのもののほうが、より深刻な問題のように思える。  排泄物まみれの下着をそのまま子供に持ち帰らせたり、管理者が衆人環視の公道の真ん中で教職員を叱責したり、幹部がヘイトスピーチを垂れ流すなど、あってはならないことだ。もはや問題は、「幼稚園児に軍歌を歌わせる」などというレベルではない。思想や政治的主張の前に、土地取引の問題の前に、森友学園には、「教育機関としての資質」こそが問われるべきではないのか。  当然のことながら、今回の大阪取材では、森友学園の籠池泰典理事長と、夫人であり塚本幼稚園の副園長である諄子氏にも取材を打診した。だが、両者とも多忙を理由に当方からの取材要請には応じていない。  今後、森友学園に対する疑念の眼差しは、さらに深まっていくだろう。土地取引に関する国会での追及も見逃せない。  だが、私は引き続き、「森友学園の教育機関としての資質」に注目して取材を重ねたい。本当の闇は、おそらくそこに、ある。 <文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)> ※菅野完氏の連載、「草の根保守の蠢動」が待望の書籍化。連載時原稿に加筆し、『日本会議の研究』として扶桑社新書より発売中。また、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中
すがのたもつ●本サイトの連載、「草の根保守の蠢動」をまとめた新書『日本会議の研究』(扶桑社新書)は第一回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞に選ばれるなど世間を揺るがせた。メルマガ「菅野完リポート」や月刊誌「ゲゼルシャフト」(sugano.shop)も注目されている
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