資産家の皇太子、日本人職人によって躍進するマレーシアのサッカークラブ「ジョホール・ダルル・タクジム」

2015年シーズンにマレーシア勢として初めてAFCカップで優勝したジョホール・ダルル・タクジム(JDT)(写真提供:Johor Darul Ta’zim FC)

 2020年の先進国入りを目指す長期計画「ビジョン2020」のもと、経済規模を拡大させてきたマレーシア。1人当たりのGDPは1万米ドルを超えており、ASEAN諸国の中ではシンガポールとブルネイに次ぐ豊かさを誇っている。しかし、堅調な成長を続けてきた経済とは裏腹に、サッカー界においては長らく停滞傾向にある。  1972年のミュンヘン五輪に出場するなど、かつてはアジアにおけるサッカー強国の1つに数えられたが、近年のワールドカップ・アジア予選では、小国同士が争う1次予選を突破するのがやっとという状態で、東南アジア王者を決める昨年末のスズキカップでも屈辱のグループステージ敗退となった。  そんな停滞の続くマレーシアサッカー界にあって、近年目覚ましい躍進を遂げているクラブが「ジョホール・ダルル・タクジム(JDT)」だ。  2014年から国内1部リーグ「マレーシア・スーパーリーグ(MSL)」で3連覇中なのに加えて、2015年にはAFCチャンピオンズリ-グ(ACL)の出場権を持たない国や地域の代表クラブによって争われるAFCカップでマレーシア勢初の優勝を飾った。いまやマレーシアを代表する強豪クラブとなったJDTだが、その実質的な歴史が始まったのは、わずか4年前に過ぎない。
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ジョホール州王族皇太子による札束戦略
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