トランプ大統領との握手時に見せた安倍首相の“自己嫌悪”とは?

日米の文化の違いを知らなければ、表情分析は難しい

 微表情を読めれば相手の心が読めるわけではありません。もちろん、ある状況とある微表情とのセットを何度も体験していれば「○○の状況の△△の微表情は、□□の意味。」と言えるかも知れません。例えば「あなたは嘘をつくとき、必ず鼻にしわを寄せるのよね。」そんな夫婦間の体験が典型的です。  しかし、微表情からわかることは抑制された感情が何か、を特定することです。そしてその感情がなぜ抑制されたのか、相手は何を望んでいるのか、本音は何なのかを知るには、微表情以外の情報や状況を利用する必要があります。  今回のケースだと、日本語と英語という知識と日本文化の知識がないと正しく安倍首相の微表情を解釈することは難しいでしょう。日本の記者の方々が安倍首相とトランプ大統領に「こちらお願いします」と言っていますが、英語でお願いすれば、安倍首相が通訳ミスを犯すという原因が作られることはなかったわけです。安倍首相は、咄嗟に記者の方々の立場に立った解釈をし、そのまま通訳してしまったわけです。ミスの原因を他者に向けるのではなく、自分に向ける、そして自分に嫌悪を抱く、これは日本人的な感情の向け方です。  日常・ビジネスシーンで微表情に気付いたら、相手に問いかけましょう。微表情は深い会話の始り、と言えます。微表情に気付いたら、その感情の方向に沿うような言葉をかけたり、質問をしてみて下さい。コミュニケーションの距離が近づくでしょう。 〈文・清水建二〉 【清水建二】 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマの監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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微表情を見抜く技術

無意識の感情の表われ「微表情」を読み取ることで、誰でもコミュニケーションの達人になれる!