3人の親の遺伝子を持つ受精卵の研究が行われる。「ミトコンドリア置換法」がもたらす未来とは

遺伝子改変術「クリスパー・キャス9システム」

 ここ数年の間に飛躍的に発達したバイオテクノロジーのひとつに、ゲノム編集技術がある。これは文字通り、Wordの文章を編集するかのごとく、ゲノムDNAの遺伝情報を編集する技術である。とくにゲノム編集技術のひとつである「クリスパー・キャス9システム」を用いることで、生物の遺伝子改変が容易にできるようになった。 「ゲノム編集で受精卵を遺伝子改変することにより、遺伝病の治療や予防ができるようになる」。研究者らは、当然のようにそう考えた。だが一方で、受精卵へのゲノム編集は、安全性と倫理について慎重な議論がなされるべきだという声が高まった。  そうした中、クリスパー・キャス9システムで受精卵にゲノム編集を施した基礎研究が、中国で行われた。ここで用いられた受精卵は子どもに発育しない異常なタイプのものではあったものの、世界に先駆けて行われたこの研究は、世界中で物議をかもした。  さらに2016年には、またもや中国で、クリスパー・キャス9システムを用いたがんの遺伝子治療が行われた。これは受精卵ではなく体細胞(リンパ球)にゲノム編集を施したもので、この遺伝子改変が子どもに伝わることはない。
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遺伝子改変人間として生まれた子供の行く末は……?
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ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影

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