彼は選挙中、「イスラム教徒を入国禁止にすべき」「ヒラリーはイスラム国の共同創設者」「メキシコ人は強姦犯だ」といった問題発言によってしばしば批判の的になっていました。ですがこうした発言さえ、実は用意周到な計算の上での行動であるフシがあります。 　彼は自伝の中で、マスコミに対してこのように述べています。「人と違ったり、少々出しゃばったり、大胆なことや物議をかもすようなことをすれば、マスコミがとりあげてくれる」「マスコミに書かれるということにはマイナス面よりプラス面の方が多い。（中略）ニューヨーク・タイムズの1面を借りきってプロジェクトの宣伝をすれば、4万ドルはかかる。だがニューヨーク・タイムズが私の取引について（中略）一段でも記事を書いてくれれば、一銭も払わずに4万ドルよりもはるかに大きな宣伝効果をあげることができる」。 　これも、実際のエピソードで見てみましょう。 　前述のトランプ・タワーは、ボンウィットビルというビルを取り壊して、その土地にタワーを建設する計画となっていました。しかし、実際にビルを取り壊し始めると、この建物の外壁に装飾としてついていたアール・デコ調の「レリーフ」に文化的価値があることが判明し、これを壊したことでトランプ氏が世間から大批判を受けることになります。 　ところが皮肉なことに、この事件によってトランプ・タワーのことがマスコミに盛んにとりあげられたことから、人々の耳目を集めることになり、結果としてこのタワーの物件の売れ行きが倍増することになったそうです。 　この事件からトランプ氏は、「悪い評判より良い評判のほうが好ましいには違いないが、商売をする上から言うと、何も言われないよりは悪く言われたほうがましだということをを学んだ」と述べています。 　選挙中の暴言も含めて、彼は良くも悪くも常に話題の中心にいました。彼は常にマスコミに話題をふりまくことで、圧倒的な認知とインパクトを獲得することになりました。そしてその結果、彼のアンチと同じくらい多くの支持者を獲得することに成功したわけです。 　以上、今回はトランプ氏の自伝から、彼の3つの「成功の秘訣」を探ってみましたが、彼のこうした戦略が今回の大統領選挙ではある意味で「効きすぎた」きらいもあります。大統領就任後もこうした好戦的・挑発的なスタンスのままで、本当にアメリカを「偉大な国」にすることができるのか、そしてアメリカ国民と国際世論はそれについていけるのかどうかについては、冷静に見守っていく必要もあるでしょう。 　次回も世界の成功者たちや大富豪をピックアップし、彼らの成功哲学をご紹介したいと思います。 【高田晋一】 成功データアナリスト。大手広告代理店グループにて市場調査やデータ分析を担当し、年間数10本のプロジェクトを運用。成功や幸福に関する文献・データを集め分析することをライフワークとし、これまでに1000冊以上の自己啓発本・成功本などを読破。その分析結果を書籍、各種セミナー、雑誌やWebの記事などを通じて発表、その普及に努めている。著書に『「人生成功」の統計学 自己啓発の名著50冊に共通する8つの成功法則』(ぱる出版)、『自己啓発の名著から学ぶ 世界一カンタンな人生の変え方』(サンクチュアリ出版)、『大富豪の伝記で見つけた 1億稼ぐ50の教え』がある。 HP:「成功データ研究所」 http://successful-data.com/ メルマガ:「今日の成功データ」 http://www.successful-data.com/2017/01/11/mailmagazine/ Facebook https://facebook.com/shinichi.exp Twitter @shinichi_exp