これまでパレスチナ領土でのイスラエルのこの入植活動の停止を義務づけたのは国連による決議2334号である。しかし、この決議案に新たな案件が草案されても、これまで米国は常に拒否権を行使して、この決議案を否決してきた。ところが、昨年12月23日に残り僅か1か月の職務となったオバマ前大統領がついにこの拒否権を行使することを米国の大統領として初めて放棄して棄権に回ったのであった。これによって、ニュージランド、マレーシア、セネガル、ベネズエラの草案が安保理で14か国の賛成、反対なし、そして棄権が米国ということになって、決議案が初めて採決された。賛成した国はスペイン、ロシア、フランス、英国、中国、日本、エジプト、ウルグアイ、アンゴラ、ウクライナ、セネガル、ベネズエラ、マレーシアの14か国であった。この時、ネタニャフ首相はダン・ジャビロ米国大使を呼びつけて厳重に抗議したという。又、それ以外で賛成に回った国に対しても忠告している。
オバマ前大統領は、パレスチナ問題の解決にはイスラエルとパレスチナの二つの国家共存という形でしか平和的解決はないと見ていたことから、ひとつの賭けに出たのであった。1月15日にフランスのパリでオランド大統領の主導によって開催される70か国が参加しての中東和平会議で2334号への参加国からの支持を集めることにしたのであった。もしこの会議でも2334号への支持が明確にされれば、イスラエルの今後の入植の遂行は米国がトランプ政権下にあっても難しくなってくるというのが明白だったからである。しかも、世界で130の国がパレスチナが国家として誕生することを支持しているのである。イスラエルとパレスチナの二か国共存を世界は訴えているのである。
フランスは、この和平会議の結果を踏まえてイスラエルに対してハーグの国際刑事裁判所にこれまでのパレスチナ人への人道を無視した行為を訴える事も検討していた。しかし、いざ蓋を開けて見ると、参加した各国の代表はイスラエルに政治的圧力を加えることを遠慮したのである。しかも、肝心の米国のケリー国務長官が、参加を辞退したネタニャフ首相を逆に安心させるかのような電話を入れて、今後イスラエルに圧力を加えるような会議は開催されないと伝えたというのである。最後の詰めの段階で結局、米国はいつもの通りイスラエルを批判することが出来なかったのである。その結果、期待された成果は全く生み出すことなくこの会議は終了した。そして、二か国が共存することを希望するという儀礼内容を確認して閉幕した。(参照「
ABC」)