中国の進出が活発だったラテンアメリカの主要国の中で、これまで忘れられて来た国が一つある。それはラテンアメリカで経済力で第二である大国メキシコだ。トランプの大統領選挙戦中からメキシコは彼の批判の対象にされ、中国からも殆ど相手にされないという厳しい状況に置かれていたのである。
これまでメキシコが中国から相手にされなかった理由は大きく分けて次の3つである。
●メキシコはNAFTAの加盟国で米国との関係が余りに強い。
●麻薬カルテルが蔓延り治安上の安全が期待できない。
●2014年には中国は高速列車の受注をしておきながら、その後メキシコ政府からキャンセルされた。
中国のメキシコとの取引が如何に少ないかということを示した数字がある。中国が2013年だけでラテンアメリカおよびカリブ諸国に投資した額は<144億ドル(1兆6560億円)>であるのに対し、2000年から2013年までにメキシコに中国が投資した額は僅かに<2億8100万ドル(323億円)>というだけに終わっているのである。(参照:「
El Financiero」)
メキシコの輸出の8割は米国市場向けである。その中でも成長したのは自動車産業である。NAFTAの取り決めを利用して生産コストの低いメキシコで生産した車が米国に無税で輸入できることから、世界の主要自動車メーカーはメキシコで生産して米国へ輸出するという取引を急成長させた。自動車の部品メーカーも同様の道を歩んで来た。それ以外の商品でも米国企業がメキシコで根を張っての生産が盛んである。その為、中国の企業がメキシコに進出し難いという環境を作っていたのだ。