イスラム国は後退しているが、アルカイダはアフリカで勢力を伸ばしている

カダフィ打倒がアルカイダ支配を生んだ

 元々、カダフィは1990年代までテロ組織を匿っていたとされ、その制裁として米国から空爆攻撃を受けた。それ以後、欧米寄りの外交路線に変更してアフリカに向けて勢力を伸展させる方向に動いた。しかし、独裁国によくあることで、反体制派はアラブの春の動きに便乗してカダフィ打倒を掲げた。またカダフィが欧米による支配を排除してアフリカ統一に動こうとしていることに欧米はそれを都合の良いものではないと見て、NATOは2011年にベンガシで生まれた国民評議会を支援してカダフィ打倒に動いて、40年続いたカダフィ政権に終止符が打たれるのである。  カダフィが打倒されて、リビアは期待に反して無政府状態になってしまった。その空白を利用しサヘル地方に勢力を張ったのがアルカイダなのである。カダフィは一般のメディアでは悪者に仕立てられているが、彼の治世ではリビアは教育面でもアフリカで最も高い水準にまだ達していたという面もある。そして、近隣諸国では救世主的な存在であった。  アルカイダが最も強力な勢力に発展しているのがイエメンである。1年前に比べ、<4倍の4000人の戦闘員を数えるまでに拡大>しているという。イエメンはハディ政権とフーシ派の戦いの間隙を縫ってアルカイダが成長している。(参照:「El Diario」)  同様にアフガニスタンのタリバンとはアルカイダは現在も関係を維持している。  一方のISはアフリカでは国内が混とんとしているリビアで彼らの存在が目立つ程度である。そして、アフガニスタンにも勢力を伸ばす行動に出たが、その成果は現れていない。  ISは後退しているが、アルカイダは勢力を伸ばしている。日本も何れテロリスとの攻撃を受けるようになる危険性は非常に高くなったいま、こうした情勢は知っておくべきだろう。 <文/白石和幸 photo by Noofa2401 via wikimedia commons(CC BY-SA 4.0)> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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