ケネディ大統領は、就任式のスピーチで「「Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country(国があなたに何をしてくれるかを問うのではなく、あなたが国に何ができるのかを問いましょう)」という名セリフを残したことでも知られ、同大統領のスピーチスタイルは、後に米国でよく用いられる「雄弁術」のスタンダートになったといわれている。そのスタンダードとは「話や文節、単語はできる限り短く」「要点は正しく順序立て」「簡潔で明瞭で強弱をつける」というものだ。
レーガンは「偉大なコミュニケーター」と呼ばれた大統領であり、その理由は「シンプル」で「クリア」で「誠実」に話すというスピーチの基本がしっかりしていためだといわれている。スピーチで国民にアピールすることを非常に重視し、演説を行う前には俳優がセリフを覚えるかのように何度も練習を繰り返していたことは有名で、常に自然な語り口調で話ができるよう心掛けていたとも伝えられている。
トランプ氏と就任式のスピーチについて意見を交換したという大統領史研究で有名なライス大学教授のダグラス・ブリンクリー氏によると、トランプ氏は大統領の歴史に非常に強い関心を持ち、過去の就任式について多くの質問をしてきたそうだ。ワシントン・ポスト紙のインタビューでブリンクリー氏は「JFKやレーガンのことと合わせて、彼が聞いてきたのは、ウィリアム・ヘンリー・ハリソン(第9代米国大統領)のことだった。ハリソンは就任式のスピーチを長々とし過ぎて過呼吸になったのだが、そのときの状況はどのようなものだったのかを詳しく話した」と明かしており、やる気満々でスピーチに臨むトランプ氏が、過呼吸になる心配をしている様子も窺える。