プラネタリー・リソーシズが開発している、資源のありそうな小惑星を見つけるための望遠鏡衛星の想像図 Image Credit: Planetary Resources
もっとも、現在ではまだ、そのような話は夢物語に過ぎない。たとえば小惑星まで行くためのロケットや、小惑星を探査したり採掘するために必要な探査機はまだ高価で、資源を採掘できても地球に持ち帰って利用するのはコスト的に割に合わず、また金属を大量に持ち込むと値崩れを起こすので大して儲からないかもしれない。かといって宇宙で利用しようにもまだ人類の宇宙進出はほとんど始まってすらいないし、宇宙で自由自在にものを造り出せるような3Dプリンターもまだないなど、障壁は多い。実際にプラネタリー・リソーシズは、当初の事業見通しが甘かったとして、若干計画を修正せざるを得なくなるなど、前途は多難である。
それでも、世界は確実に未来へ向けて動き始めている。民間企業による低コストなロケットや衛星の開発は日夜行われており、宇宙旅行や宇宙ホテルの実現も見えており、人類が宇宙に進出する準備は、これまでにないほどの勢いと実現性をもって進んでいる。
今回のNASAのサイキによる探査は、そうした未来にすぐにつながるものではないかもしれないが、たとえば金属質の小惑星がどういうものかという理解が進めば、他の資源をもつ小惑星を見つける技術や採掘方法の確立につながり、資源としての利用方法も見出だせるだろう。
それが可能になるのは明日明後日ではないかもしれないが、技術を正しい方向に発展させていけば、私たちが生きているこの数十年の間に可能になるかもしれない。
NASAの考える小惑星採掘のコンセプト・アート Image Credit: NASA
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●作家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『
イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/about/
Twiter:
@Kosmograd_Info
【参考】
・NASA Selects Two Missions to Explore the Early Solar System | NASA(
https://www.nasa.gov/press-release/nasa-selects-two-missions-to-explore-the-early-solar-system)
・ASU to lead NASA space exploration mission for 1st time | ASU Now: Access, Excellence, Impact(
https://asunow.asu.edu/20170104-discoveries-asu-lead-nasa-space-exploration-mission-1st-time)
・Psyche: Journey to a Metal World | School of Earth and Space Exploration(
https://sese.asu.edu/research/psyche)
・President Obama Signs Bill Recognizing Asteroid Resource Property Rights into Law | Planetary Resources(
http://www.planetaryresources.com/2015/11/president-obama-signs-bill-recognizing-asteroid-resource-property-rights-into-law/)
・H.R.2262 – 114th Congress (2015-2016): U.S. Commercial Space Launch Competitiveness Act | Congress.gov | Library of Congress(
https://www.congress.gov/bill/114th-congress/house-bill/2262)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
Webサイト:
КОСМОГРАД
Twitter:
@Kosmograd_Info