【2016年アジアサッカーまとめ】次々と歴史を塗り替えていくカンボジアサッカー

外国人選手と自国選手の活躍が光ったカンボジア国内リーグ

 2016年シーズンのカンボジア1部リーグは、2015年シーズンの12チームから2チームが経営難により撤退を余儀なくされ計10チームで開催された。  また2016年シーズンはプレーオフ制度の廃止、アジア枠1名を入れた外国人枠5名までが登録可能なレギュレーションで2016年2月から同年9月まで熾烈な首位攻防戦が繰り広げられた。  日本人選手は2015年シーズンに引き続き15名が各チームでプレーし、外国人枠は計50人のうち日本人15名、北朝鮮人4名、韓国人5名、その他アフリカ人(特にナイジェリア人)で構成され、外国人枠においてアジア人選手(日本人、北朝鮮人、韓国人)の構成比が約50%とカンボジアリーグがアジア人にとって注目され始めているマーケットであることを定量的に示した。  特に北朝鮮選手4名のうち2名は2016年、北朝鮮フル代表に名を連ね、その2名の中の1人は2015東アジア選手権の北朝鮮代表vs日本代表の試合でゴールを決めた李赫哲という選手である。  実はカンボジアは北朝鮮と国交が結ばれている背景もあり、ナショナルディフェンスミニストリーFCというカンボジア王国の防衛省が母体となっているチームに4名所属している。彼らの活躍もあり最終節まで持ち込んだ優勝争いは惜しくも勝ち点1差で優勝を逃したが、堂々の2位で2016年シーズンをフィニッシュした。  優勝チームはカンボジアサッカー界の英雄チャン・ワタナカ選手が所属するボンケットアンコールFC。チャン・ワタナカ選手は22ゴールで得点王とMVPのダブル受賞を果たした。同選手は個人として2シーズン連続の得点王に輝いた。なお、得点ランキング2位はナショナルディフェンスミニストリーFCに所属する北朝鮮ストライカーであった。  そしてこのチャン・ワタナカ選手には、2016年11月、Jリーグ史上初のカンボジア人サッカー選手となる可能性が出てきた。  なんと、J3藤枝MYFCの練習に約1週間弱参加するチャンスを獲得したのだ。もし加入となればカンボジアの歴史をまさに塗り替える大きな出来事となる。なお、カンボジアリーグはJリーグと2013年5月からパートナーシップ契約を締結するなど繋がりを深めている国の一つであり、外国籍枠の扱いとは異なる「AFC枠(アジア枠)」または「Jリーグ提携国枠」の選手として出場できることになる。 <篠田 雄輔 > 1991年生まれ神奈川県出身。青山学院大学を卒業後、経営コンサルティング会社アクセンチュアの日本法人での勤務を経験。その後カンボジア1部リーグに所属する日系プロサッカークラブのカンボジアンタイガーFCにて勤務。現在はカンボジアプノンペン在住で、同クラブの現地責任者としてカンボジアサッカーの発展に従事。アジアサッカー研究所の一員としても活動中。 <アジアサッカー研究所> 東南アジアを中心としたアジア新興国と日本およびアジアの国々のさらなる発展のために、各国の取り組みをリサーチし、関係者に共有し、さらなる価値を創造していくことを目的として、人材開発とコンサルティング分野など、日本とアジアのサッカー交流を加速させるプロジェクトとして活動している。http://ja.ifaf.asia/
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