1万人を面談した現役産業医が指摘する「経営者と社員のための長時間労働対策」3つの処方箋

photo by カメラ兄さん

 ストレスチェック制度も1年目が終わり、最近は再び、長時間労働(過重労働)が注目されています。  ’16年10月に、電通新入社員の自殺のニュースが話題になったことも影響していると思いますが、最近、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社の松浦勝人社長が労働監督基準署からの是正勧告に対して反論し、賛否両論を呼んでいます。さらに、クリスマスイブの夜に、NHKが放映したのは、長時間労働をテーマとした番組(NHKスペシャル『私たちのこれから』)でした。

長時間労働はなぜ減らないのか

 私は産業医として約10年間働き、合計1万人ほどの働く人と面談を行ってきましたが、従業員からだけでなく管理職側からも、長時間労働を解消したいという声を聞かなかった年はありません。全てのクライエント企業においてです。  それにもかかわらず、なぜ、まだまだ残業が減らないのでしょうか? 長時間労働の結果、体を壊し、時に自殺者まで出る異常な状態が変わらないのでしょうか? 「時短をしろ」「残業するな」というだけの号令型改革、「人事が早く帰れと会社を巡回」「19時には電気・空調オフ」などの実力行使型改革、具体的な対策案のでない社内研修などの意識改革型改革などなど、さまざまな“長時間労働対策”が日本では行われています。  いずれにおいても、本気度の伴わないうわべだけのものだったり、長時間労働を減らすこと自体が目的となってしまい最終的な負担は労働者にかかるだけなどなどで、結局は何も変わっていないことが多いのではないかと思います。  今回は、本気で労働時間を減らしたいならば、長時間労働(過重労働)対策に本腰を入れて取り組むのであれば、会社と労働者、両者に実践していただきたいちょっと苦い3つの処方箋を書かせていただきます。 1.会社の意思決定と表明 2.人事評価に生産性向上という質の評価を与える 3.労働者自身が、それぞれの早く帰る動機(理由)を持つ それぞれ詳しく見ていきましょう。
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会社の意思決定と表明
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