“手のひらサイズ”の人工衛星が拓く宇宙革命!ブームになりつつある超小型衛星に秘められた可能性とは?

 こうしたキューブサットの概念は、1999年に日米の大学を中心に提唱され、これまでに日本を含む世界中の大学や高専、高校などの教育機関を中心に、数多くのキューブサットが開発され、打ち上げられている。  たとえ手のひらサイズでも、カメラで地球を撮影したり、通信したりできる、歴とした人工衛星である。学生のうちから本物の人工衛星の開発や運用にかかわれることの価値は大きい。実際、より大きく本格的な衛星や探査機の開発や運用にたずさわっている人の中には、「学生時代にキューブサットを造っていました」という人も多い。

東大が開発したTRICOM-1

TRICOM-1の実物。中央上半分に見える四角柱の機体が衛星本体で、下の円筒形の部分はロケット(ただしここに写っているのは試験用のダミー)

 今回、SS-520-4号機で打ち上げられる超小型衛星「TRICOM-1」も、このキューブサットの一つである。全長は約30cm、幅は約10cmの直方体、質量は3kgで、基本形となる10cm四方、質量1kgの3倍の大きさをもつことから、「3Uキューブサット」と呼ばれる。  衛星の開発は東京大学が担当した。東京大学は、2003年に世界で初めて打ち上げられた複数のキューブサットのうちの1機を開発したことにはじまり、数多くの超小型、小型衛星の開発を長らく続けてきており、この分野では高い技術と実績をもつ。2008年には、東京大学と、同じく黎明期からキューブサットに取り組んできた東京工業大学とがつちかってきた技術をもとに、超小型衛星の開発・販売を手がけるベンチャー企業も誕生している。  TRICOM-1は、衛星の各面に1基ずつ、合計6基のカメラが搭載されており、地球を撮影して地球に送ることができる。また、地上から送られてくるデータを収集し、一旦内部に貯め、衛星が地上の管制局の上空に差し掛かった際にそのデータを送信する、「ストア&フォワード」と呼ばれる中継衛星としての役割をもっている。これはたとえば、日本ほど情報網が発達していない国で、海上や山の中にある観測装置からの情報を集めるなどの利用法が考えられており、実際に海外でのニーズも高く、依頼も来ているという。ちなみにTRICOM(トリコム)という名前は、このように情報を「取り込む」というところから来ているとのこと。
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商用利用にも拡大されるキューブサット
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