各社とも、不採算部門の切り捨てや、世界的な環境シフトにより、『悪路走行用高床2トンダンプ』の再生産は難しい状況にあるのが現実だ。山中氏が問い合わせたところ、日野自動車やいすゞ自動車は、排ガス規制により排気ブレーキが過去の車両同様のものを生産再開することは無理だとしても、なんとか悪路走行用高床式四駆を出せないかを検討するという答えを貰ったという。
「もちろん、環境を考えれば排ガス規制も大事だと思います。しかし、森林資源の放置防止と間伐の推進に役立つ林業もまた、地球温暖化の歯止めになるんです。環境保護のための自動車規制が、逆に他のルートから環境を保護できる林業に水を差す結果になっているのは皮肉な事実です。林業従事者は旧型車を大切に乗り続け、かろうじて動かしている状態です。修理部品が欠品・生産中止になっても、高額でも特注で作ってもらい急場をしのいでいます。しかし、金属疲労や腐食により、シャシーや車両メインの部分で修理不可能になってしまうとそれで終わりなんです。可能なら次期発売されるトラックに、このような悪路状況下・林道でも走行可能なトラックを生産してもらいたいと思っております。そして、そのことは排ガス規制と同じくらい、森林資源の保護・有効活用につながり、地球温暖化を止めることにも役立つことになると思うんです」
林業従事者が直面し、現場ではないとわからない問題点。もちろん、自動車メーカーも企業である以上採算を考えなくてはいけないが、こうした現場の声が届き、双方にとって良い方向に進むことを願わずにはいられない。
<取材/上原純(OfficeTi)写真提供/
吉野の杜人奮闘記>