ルノアールの決算書を読み解いていくと、もう1点。他ではなかなかみられない指標にお目にかかることができた。それは、「受取補償金」という項目だ。
特別利益としてほぼ毎年計上されている受取補償金は、ここ2年なんと当期純利益に迫る額となっている。逆に言えば、受取補償金がなければルノアールはほとんど利益を上げられなかったということになる。
⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=120349
この受取補償金の正体は「立ち退き料」である。ルノアールが入居しているビルの賃貸人が、ビルの老朽化などを原因に建て替えをしたいと考えると、ルノアールは立ち退き料をもらってその店舗を撤退する。それが毎年のように計上されているのだ。確かに、ルノアールは定期的に店舗を閉じている。
そう考えると、前述したルノアールの立地戦略は、賃料をもともと安く抑えるだけではなく、立ち退き料を得ることまで見越している二重に有用なものであるとも言える。原価率が極めて低いことから高利益を出しやすい体質なのも、賃貸人との立ち退き料の交渉で有利に働く。
喫茶店を単なる作業スペースやくつろぎの場として考えず、その背景にある経営戦略に思いを巡らせれば、意外な面白い事実が見えてくるものだ。
【参照】
株式会社 銀座ルノアール「
有価証券報告書・四半期報告書」
<文/大熊将八>
おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『
進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは
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