英国は本当にEU離脱できるのか? 力を増す英国内の「反Brexit」派

 この段になると、議会で審議にかけてもBrexitそのものが否決される可能性が強くなっていると見る以外ない。そしてこれは、メイ首相にとっては厳しい選択を迫られることになるだろう。というのも、メイ首相もキャメロン前政権時には内務相としてBrexitに反対を表明していたが、首相に成ると、考えを180度転換させ、しかも移民の入国を英国がコントロールするというHard Brexitを主張して来たからだ。その手前、今更、首相として、おいそれとBrexitを否定することは出来ない立場にある。そこで考えられるのは、首相として辞任するか、或いは前倒し総選挙に打って出るかの二者択一しかなくなるわけだ。  6月にBrexitが勝利した当初であれば、内心それに反対している議員も選挙の地元がBrexitが勝利した地区であれば、選挙で勝つ為に自分自身の本意に逆らってBrexit賛成を選挙キャンペーンで表明する可能性はあった。しかし、今はマスコミなどでもEUから離脱した時に及ぼすマイナス影響が十分に報道されて、多くの国民は英国のプライドよりも経済を優先するようになっていると言われている。実際に、イプソス・モリ世論調査では<経済優先支持者が49%、一方で移民の入国に反対しBrexitを支持者が39%>という結果が出ているのである。そして、<EUから離脱した方が生活レベルは良くなると答えた者は24%で、逆に悪くなると答えた者は49%>という結果が出ている。(参照「El Confidencial」)  EU側は英国が50条の通告をできるだけ早くするように迫っている。しかし、現時点ではメイ政権はEUからの離脱は当初発表していた2017年から2019年に延長させた。そんな中で、このような状況が進んでいることを考えると、この先も英国民がEU離脱への支持を持続させることは難しくなるのではなかろうか。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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