速報で流れたニュースの表題だけ見れば、朴大統領が早々に辞任するかのように受け取らがちだが、これは「崔順実ゲート事件」に関わる一連の政治スキャンダルで追い込まれた朴大統領の「奇手」であると思っている。
そもそも、今週の金曜日には野党を中心に、朴大統領の「弾劾訴追」の決議が国会にかけられる予定となっていた。国会の過半数(300議席)に満たない野党であるが、与党・セヌリ党からも「非朴系」と呼ばれる議員40名程が「造反」すると見込まれており、「弾劾」は時間の問題であった。
しかし今回の談話によって、「非朴系」の議員たちが「弾劾」に賛成しない可能性が出てきた。本人が「辞意」を発表したのだから、無理やり「弾劾」をする必要はない。与党議員として造反のリスクを負う必要もない。野党の「弾劾訴追」の決議が空転する公算が高くなった。大統領の談話発表後、与党議員から弾劾日程の再検討の声も上がっている。
仮に「弾劾訴追」を行わなければ、朴大統領のいう「任期短縮」へと舵が切れる。
大統領の任期や権限等は韓国憲法に明記されているので、「憲法改正」を行わなくてはならない。安定的な政権の委譲が大前提であるならば、「憲法改正」も慎重にならざるを得ない。
一言で「時間稼ぎ」だ。なんのために。一つは国民世論の鎮静化を図るため。もう一つは、次期大統領たる人物の準備を整えるため。大統領の権限の矮小化も視野にある。国政を大統領の手から離し、議会制民主主義への移行のステップを踏むかも知れない。