職場のストレスでメンタル不調になりやすいのはこの3タイプ

他人を巻き込みたくない「我慢のストレス」

 2つ目の反応性ストレスは「我慢のストレス」です。これは、「No」と言えない人に生じやすい反応性ストレスです。  頼まれた仕事や苦手な人間関係にNoと言えずに我慢、あと少しと考えて我慢、仕事がなくなることが怖いから我慢など、我慢の連続です。ただし、仕事や人間関係は続くことが多く、実際の我慢はあと少しでは終わらないことがほとんどです。  働く人にとって、多少の我慢は必要でしょう。しかし、この我慢がストレスになり、自分の健康を害するまで溜め込んでしまうのは問題です。我慢の反応性ストレスを溜め込みやすい人たちに共通しているのは自分のストレス原因への対処手段に、他人を巻き込みたくない、他人に迷惑かけたくないという感情があることです。  「他人に迷惑かけたくない」とは一見、聞こえもいいですし、自分のストレスとならない範囲内で実行できている限り、これは美徳です。しかし、この気持ちの根底には他人を巻きこんだり、荒波を立ててしまったら、自分が嫌われてしまうのではないか、ガッカリされるのではないかという不安が潜んでいることが少なくありません。  我慢を続けていても報われていないでいると、我慢が叶わない、何も改善しない、ふとそのように感じた瞬間に張っていた気持ちが切れてしまいます。肉体的あるいは精神的な疲労の蓄積に気づき、今までの我慢していた反応が、「反応性ストレス」に変わります。  ちなみに自己肯定感の高い人であれば、自分と相手との関係性が強固なものであると自信を持っていたり、「No」と言うことで自分のすべての評価がネガティブになることはないとわかっていますので、我慢がストレスになる手前で「No」と言えています。  周囲から見ても次第に調子を崩してるように映り、心配した上司や同僚から産業医にかかることや休暇を取ることを勧められるものの、「大丈夫です。もう少し頑張ります」と返答し、早期治療の機を逃してしまったパターンを私は数多く経験してきました。

周囲が気づかぬうちに病む「ガス欠ストレス」

 3つ目の反応性ストレスは「ガス欠ストレス」です。これは仕事以外の日々の生活に趣味がない、楽しみがない、熱中するものがない。それゆえに、気分転換や「on」「off」のメリハリがなく、なんとなく、ただなんとなくに徐々に調子が悪くなってしまうパターンです。  先日、産業医面談に来た転職後2年目の32歳、独身男性はこの典型例でした。最近、会社を休みがちだということで上司から勧められ、産業医面談に来ました。彼の勤怠簿を調べてみると、半年前からは毎月1、2回は病気で休んでいたようでしたが、上長からの仕事の評価は「ハイパーフォーマーではないが、ローパーフォーマでもない」。つまり、休みの回数以外はごく普通の社員とのことでした。  実際に私が話を聞いてみると、半年ほど前から「体調不良によく見舞われるようになり、2か月前から頭痛とめまいの頻度が増えた」とのことでした。近所の医者で頭のMRI検査を受けるも異常なし。頭痛薬をもらい飲んでみると、症状は一時改善しましたが、最近は改善しにくくなり、医者からも遠ざかっているとのことでした。会社から徒歩圏に住み、睡眠も良好、特に仕事がやりにくくなったり結果が出なくなったとの自覚はありませんでした。  ただ、もう少しプライベートも含めて聞いてみると、週末は一人家で何もしないで過ごすことが多いとのことでした。1年前までは、前の会社の同僚たちと毎週の飲み会や週末の麻雀大会を楽しんでいたようですが、転職後は疎遠になり、また今の部門は同世代がおらず、平日の飲み会も週末の友人たちとの集まりもなくなってしまったとのことでした。  仕事は嫌いではないが、淡々とこなすのみで、特に達成感やチームワークを感じることはない。帰宅後、仕事はしないものの一人でテレビとゲームをして過ごす日々で、だんだん何もする気がなくなってきているということもわかりました。  面談中、相手の目を見て話すこともほとんどなく、笑顔もなく、覇気がなかった姿が印象的でした。この男性は特別目立ったきっかけや原因がなく、周囲が気づかない間にストレスをため、心身ともに病んでいくパターンの典型例とも言えるでしょう。メンタルヘルス不調の発症を上司や同僚が知ると「あの程度の仕事で?」と、周囲が驚くようなケースが多いです。  症状が悪化するまでは、仕事をそつなくこなすものの、日々の生活に楽しみ、喜び、熱中できることなどがなく、気分のリフレッシュ、エネルギーの充電ができず、肉体的にも精神的にも磨耗消耗したガス欠状態です。例え働き続けることができていても、仕事以外での熱中できること、趣味などを見つけない限り、なかなか治らない種類の反応性ストレスです。  この方には仕事以外でも自分の熱中できることを見つけることが大切と感じ、薬を中心とした治療よりもカウンセリングを勧めました。
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「仕事や職場が強いストレス」という人は増加傾向に
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