『海賊と呼ばれた男』のモデルとなった出光興産。お家騒動だけじゃない経営危機とは?

多角化に出遅れた出光興産が生き残る道とは?

 原油価格が低下すると、保有している在庫という資産の価値が目減りしていく。それが赤字として計上されていたのが解消されただけであり、衰退していく業界構造というより大きな要因は少しも変わっていない。  自社の手掛けている業界の凋落が免れないものであるなら、基本的には生き残る道は2つしかない。1つは海外展開である。例えばJTは国内のたばこ工場を次々と閉鎖したが、同社は今や海外たばこ事業の売上が国内たばこ事業の2倍に達するグローバル・カンパニーへと脱皮した。  だが、世界的には石油業界は「メジャー」と呼ばれる巨大資本が蠢き、熾烈な競争環境にある。だからこそ規模を拡大して価格競争力を高めるために経営統合をしたかったのだが、その道は絶たれてしまった。  もう1つの道は多角化である。例えば、20年間で約2兆円も市場が縮小した印刷業界の最大手・大日本印刷と凸版印刷は、自社の技術を活かしてエレクトロニクス業界や食品・飲料業界に参入し、今や本業の印刷業に匹敵する利益を他事業であげつつある。  しかし、この多角化は出光においてはうまくいっていない。セグメント別の売上高を見ると、9割以上が石油関連であることが如実に見て取れる。 ⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=118794  これが例えば業界最大手のJXであれば、まだ多少は天然ガスや金属など、他の事業にも手を出していることがわかる。 ⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=118795  前述した通り、石油は売上高の規模が非常に大きいため、なかなかそれに代わるような新たな事業の柱を見つけることは難しいのだろう。出光は’15年度期には約41億円を投じて、電子資材やアグリバイオ、その他新規事業関連の研究開発を促進しているが、これらの中から早晩、有望な領域が見つからなければ状況は悪化していくばかりだ。  小説『海賊と呼ばれた男』では主人公の国岡鐡造率いる国岡商店が、何度も破綻の危機に見舞われながらもその度に知恵を振り絞り、リスクをとって生き延びてきた姿が描かれている。モデルとなった出光興産も今また、巨大な危機に立ち向かう時期がきている。 【参照】 出光興産株式会社「有価証券報告書・四半期報告書」 <文/大熊将八> おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok
1
2
3
進め!! 東大ブラック企業探偵団

ニッポンを救うホワイト企業はここだ!!

ハッシュタグ