自滅か存続か? EUの命運を左右する選挙が5か国で予定されている

 イタリアの国民投票は、これまで上院と下院が同じ立法制度の権利をもっているのを、レンツィ首相は上院の現行定数350議席から100議席に減らし、上院が持っている下院との同等の立法上の権利を無くして、実質的に下院だけの一院制にするために憲法の改正を行うという案の審査を国民に委ねるというものである。この改正によって、政権の安定化と議会制度のスピード化を図ろうとするものである。  レンツィ首相が国民投票を実施すると決めた昨年4月頃には、この改正に賛成派が多数を占めると見られていた。しかし、投票日が近づくにつれて<反対派が39%、賛成派の35%を上回るようになり、まだ未決定が26%>という世論調査の結果が『La Republica』紙によって報じられた。(参照『La Republica』)

改正案可決でレンツィ失脚&五つの星台頭

 問題は、この改正案が否決されると、レンツィ首相の辞任は必至で、総選挙となり、ポピュリズム政党五つの星が他党と連携して政権を担う可能性が生まれることである。 「五つの星」政党はイタリアのユーロから離脱を問う為の国民投票の実施をすべきだとして、その案を議会で審議にかけるべく<丁度1年前に20万人の署名を集めた>という政党なのである。五つの星とイデオロギーは異なるが、同じくユーロ離脱に賛成している北部同盟との2党への支持者だけで既に40%を占めることになるという。またレンツィ首相が率いる民主党も党内がこの改正に賛成と反対に二分しているという問題を抱えている。(参照:『Sputnik News』)  イタリアはEU内で英国を除きGDPで3位の国である。国民投票が否決されると、それが導火線となってイタリアのユーロ離脱の可能性が浮上して、他のユーロ加盟国にマイナス影響を及ぼすのは必至である。
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大統領選「やり直し」のオーストリア
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