労働者の被曝を闇に葬る、電力業界の「ブラックな手口」

国の陰に隠れる電力業界

 国は電力会社や工事会社の報告をもとに、梅田さんの総被曝線量を8.6mSvと算定。被告弁護団は、梅田さんは最大200mSv以上被曝していると主張している。線量計の“預け”だけでなく、被曝数値の管理表も改ざん可能な鉛筆書きだったり、被曝線量が多いときは少なめに数値を申告させられたりと、ずさんすぎる線量管理が行われていたことは当時の証言などから明らかだ。  電力会社や定期点検作業を受注した会社は国の後ろに隠れ、労働基準監督署は労災を認可しない。裁判所も国の主張を鵜呑みにした判決をくだす。原発での作業以外由来が考えられない以上、第一に労働者を守るべきなのは原発定期点検の受注企業であり、それを発注する電力会社だ。守られなかった場合に労働者を救済すべき労働基準監督署も労働環境を精査したとは言えず、裁判所も同様である。  梅田さんのケースは氷山の一角だ。原発関連の被曝による労災認定の総数は通算20件もない。原発労働者の総数から考えると、泣き寝入りしている人々がその背後に数知れず存在することは確実だ。  今日も福島第一原発の事故処理で、大量に被曝しながら作業を続けている人たちが大勢いる。今後も長年にわたって被曝労働が必要とされるだろう。梅田さんのようなケースを繰り返さないためにも、「原発ブラック労働」問題に今こそ向き合うべきなのではないか。 <取材・文・撮影/足立力也>
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
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