中国、新しい宇宙ステーションと宇宙船の打ち上げに成功。慎重・着実に歩みを進める中国の有人宇宙開発

中国の有人宇宙開発の今後と、他国との関係

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打ち上げを待つ天宮二号 Image Credit: China Manned Space Engineering Office

 中国は天宮へ自国の宇宙飛行士を送り込むと同時に、他国の宇宙飛行士も受け入れるとしている。ソヴィエト・ロシアでは、ミールに旧東側諸国の宇宙飛行士を送り込ませ、外交手段として、また西側への対抗の象徴として活用したが、中国も同様の狙いをもって、第二の国際宇宙ステーションとしての活用を考えていることは間違いないだろう。  しかし、米国やロシア、欧州、そして日本などと完全に独立した歩みを取るかといえば、必ずしもそうではないだろう。天宮の次に何をするのかはまだ見えていないが、いずれは有人での月や火星探査へと進むことになろう。だが、たとえ中国に勢いがあるとはいえ、単独で計画が進めるのは難しく、どこかで他国と協力する形になるだろう。  すでに他国との協力の動きは出始めている。たとえば欧州では、有人宇宙開発の一部で中国と連携する動きがあり、欧州で選抜された宇宙飛行士が中国語の勉強を始めているという。もともとドイツなどは中国との連携に興味をもっており、中国の宇宙実験用の人工衛星にドイツの実験装置が搭載されたこともある。いずれ欧州の宇宙飛行士が天宮を訪れることもありうるだろう。  また米国でも、宇宙分野での中国との協力はたびたび話に上る。いずれも立ち消えになっているが、最近でもトランプ候補の宇宙アドヴァイザーが「国際宇宙ステーションに中国を招待したい」という発言をしている。今後の情勢の変化によっては、また現在の国際宇宙ステーションにおいて米国の最大のパートナーであるロシアとの関係が悪化していることからも、米ロ以外で有人宇宙船を保有する唯一の国である中国が、何らかの形でかかわることはありうるだろう。  そして日本にとっても、中国の存在は無視できなくなるだろう。日本は独自の有人宇宙船をもっておらず、宇宙飛行士の輸送はロシアと米国に依存している。また、国際宇宙ステーションには「きぼう」という日本が開発した実験室があるが、電力や生命維持などの機能は米国側に依存している。今後も他国に依存した有人宇宙開発を続けるのであれば、どこかで中国とかかわることもあろう。そしてそれは、日中の友好と、人類の科学・技術の進歩にとって有益なものになろう。 <文/鳥嶋真也> とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。 Webサイト:http://kosmograd.info/about/ 【参考】 ・http://www.gov.cn/xinwen/2016-09/15/content_5108728.htmhttp://www.gov.cn/xinwen/2016-09/16/content_5108792.htmhttp://www.gov.cn/xinwen/2016-10/19/content_5121187.htmhttp://www.calt.com/n689/c6523/content.htmlhttp://www.calt.com/n689/c6636/content.html
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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