問題は、この大胆な改正に他党がすべて反対しているのである。当初、この改正に賛成したベルルスコーニ氏の政党フオルツァ・イタリアでさえも反対に回っている。さらにはレンツィ首相の民主党内も意見が二つに分かれてしまっており、党内の反対議員の間では、下院の選挙法改正だけにして、上院の改正はしないようにという意見だ。
これに対して、レンツィは国民から広く支持を集める攻勢に出た。公務員の1万人募集、270億ユーロ(2兆9700億円)を充てて厚生費及び年金の増額、法人税の27.5%から24%への減額をすると約束したのである。政府の歳出を増やして国民を満足させて、その見返りに国民投票で支持を得ようという作戦に出たというわけだ。
また、国民の間で不満が募っていた「徴税請負人制度」の廃止も決めた。イタリアでは納税を請負人に任す制度を採用している。問題は、請負人は手数料を取ることであり、集めた税金を国に納めるまでの期間はそれを運用することさえできる。そして、高額納税者には寛大に対処して、その見返りを貰うといった癒着した事態にもなっている。その現状を知っている多く国民は、彼らの存在は不要だとしていた。この廃止案は五つの星の政策に挙げられていた。レンツィ首相はそれを横取りするかのように、この制度の廃止を決めたのである。(参照:『
ABC』)