タイ国民に広く愛された国王崩御。現地記者が見た街の様子

 プーミポンアドゥンヤデート国王は国民に愛される存在であった。街中には国王の肖像画が飾られ、紙幣もすべて国王の顔が印刷されている。14日の16時30分ごろ(日本時間同18時30分ごろ)にシリラート病院から棺が運び出され、チャオプラヤ河の対岸にある王宮へと移された際にも沿道にはたくさんの市民が集まり、またこの様子はタイ全土に生中継された。日系のデパート「伊勢丹」前にある大型ビジョンでも放映され、デパート館内では移送中である趣旨と国王を讃える言葉が放送されていた。ビジョンに映る映像を観ながらすすり泣く声も聞こえ、いかに愛された王であったかを肌で感じられた。

大型ビジョンに映し出された国王の棺を乗せた車列

 プーミポンアドゥンヤデート国王は今年6月に即位70年を迎えていることから、平均寿命が74歳程度とされるタイでは大半の国民が君主が崩御するというのはまったく初めての経験になる。そのため、混乱が予想されたが、今のところ大きな問題は起きていない。むしろ、日本の昭和天皇崩御のときよりもタイ国内は落ち着いていると言える。

商魂たくましく、街中の服飾店では黒い服が主力製品になっていた

 タイ政府も公務員は1年間喪に服すことを発表し、同時に、民間には向こう1か月間は派手なイベントなどを控えてほしい趣旨を伝え、特別に休日にしたりするようなことはなかった。そのため、翌14日も特に街中に変化はなく、黒い服装、哀悼の意を示す垂れ幕などがあるくらいで、渋滞も発生しているし、休業する店も多くなかった。悲しみに暮れながらもタイ人は気丈に日常生活を送っている。
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経済活動の停滞や国政の混乱は?
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