言い換えれば、クラウドファンディングによる資金を集めやすいのは、普段からネット上で興味深い発信をし、多くの支持を集めるタイプの研究者である。SNSで多くのフォロワーを抱える筑波大学助教の落合陽一氏は、クラウドファンディングサービス
「READYFOR」で939万円もの資金を集めるのに成功している。この出来事は、研究費獲得というゲームのルールが大きく変わってきたことを示している。
筆者の場合、有料メールマガジンや研究対象であるクマムシのキャラクターグッズを販売するなどし、研究費の一部に充てている。また、筆者が主催するオンラインサロン
「クマムシ研究所」や
「クマムシ研究会」では、大学に属さない在野のメンバーが集まり、クマムシの研究を行っている。メンバーの中には、クマムシを題材にした
アプリを開発しているプログラマーの方や、クマムシの新たな飼育法の確立に挑戦している小学一年生もいる。
クマムシのような基礎研究では、アマチュアでも専門家を出し抜くような新発見をすることがある。市民を巻き込んだオープンサイエンスの活動を行うことにより、費用をかけずに研究を推進することが可能になるのだ。オープンサイエンスは、大学などの研究機関に所属しない在野の研究者を育む場になる。国と税金が介在せずに、アカデミアの研究者と市民研究者がWin-Winの関係を築くことができる。
研究費の集め方や研究活動のやり方も、多様化している。基礎研究の芽を絶やさないためには、科研費など既存の財源に頼るだけでなく、新しい手段も取り入れていくべきだろう。
<文・堀川大樹 photo by
Adam Baker via flickr (CC BY-SA 2.0) >
クマムシ博士。1978年東京都生まれ。2001年からクマムシの研究を続けている。北海道大学で博士号を取得後、NASA宇宙生物学研究所やパリ第5大学を経て、慶応義塾大学先端生命科学研究所特任講師。クマムシ研究の傍ら、オンラインサロン「
クマムシ博士のクマムシ研究所」の運営やクマムシキャラクター「
クマムシさん」のプロデュースをしている。著書に『
クマムシ博士の「最強生物」学講座』(新潮社)と『
クマムシ研究日誌』(東海大学出版会)。ブログ「
むしブロ」、有料メールマガジン「
むしマガ」も運営。