実際の数値を見ても、自信と能力の相関は0.30ぐらいのもので、両者にはほぼ関係がないといっていいでしょう。自己啓発書の内容とは完全に真逆の結果ですね。それにも関わらず、いまだに世間では「自信=成功」のイメージが強い理由について、バウマイスター博士はこう言っています。
『自信を持っている人の多くは、自分の成功や幸福を実際よりも誇張しがちだ。また、自信が高い人のなかには、自己弁護ばかりするうぬぼれの強いナルシストが多い。その結果、必要以上に自信の高さがもてはやされるようになってしまう』
どうやら、多くの自信家は、能力がなくてもセルフプロデュースが上手い傾向があるため、実際よりも「自信の高さ」が良いもののように見えてしまうようです。なんだかボロクソですね。それでは、さらに話を進めて、もともと自信がない人に自信をつけさせたら、いったいどんな結果が出るのでしょう? 自己啓発の世界では「根拠がない自信を持とう!」といった主張がよく見うけられ、多くのユーザーから人気を得ているようです。そこで参考になるのが、2007年にリッチモンド大学が発表した論文(2)。この実験で、研究チームは、成績が悪い学生だけを集めて以下の2つにわけました。
1.根拠のない自信グループ:教師から「お前には本当は能力がある!」と指導される
2.ニュートラルグループ:次のテストの日程や出題範囲などを普通に伝えられる
要するに、根拠のない自信で成績があがるかどうかをチェックしたわけですね。
その結果は、根拠のない自信グループの惨敗でした。なにせ、ニュートラルな生徒よりも成績が悪かったどころか、自分たちの過去の平均点を20点も下回ったというから相当なものです。こういった現象が起きたのは、根拠のない自信により、生徒たちのモチベーションが下がったからです。実際よりも自分は能力があると勘違いをした結果、努力をしなくなってしまったわけですね。ビジネスの世界でも、よく見かける事態ではないでしょうか。