もう一つの「東芝事件」――手を挙げない“高ストレス者”に自己責任を求められるのか?

 ストレスチェック制度開始後の現在、職場でメンタルヘルスに絡むトラブルが発生した場合、過去のストレスチェックテストの結果がどうだったのかは、関係者が注目するところとなるでしょう。社員が急に脳梗塞や心筋梗塞で倒れた時に、直前の健康診断結果を見直すのと同じですよね。

なぜ労務トラブルは起きるのか?

 該当社員は、ストレスチェックテストを受けていたのか? 高ストレス者だったのか? 高ストレス者の場合、面接指導を受けたのか(受けていれば会社はその内容を知っているはずです)? それとも高ストレス者なのに面接指導を受けていないのか(受けていないから会社は知らないで済むのか)? いろいろなパターンが想像されます。それぞれの場合に対して、会社および従業員本人は、どのような責任を負うのでしょうか。どのようにすれば、会社としての責任=安全配慮義務違反リスクを軽減できるのでしょうか。  私はこれら疑問(質問)の答えのなかには、本当の解決策はないと考えています。  産業医として通算1万人との面談をしている経験から誤解を恐れずに申し上げますと、労務トラブルの多くは、制度や規則の不備から生じるのではありません。メンタルヘルスにまつわる労使のトラブルは、多くの場合、ルールや規則が不備で起こるわけではないのです。メンタルヘルスにまつわる労使トラブルは、ほとんどの場合、“感情的なもつれ”から、“ルールや規則の不備”をついて(荒さがしして)起こっているからです。感情的なもつれから、制度や規則の不備をつついて発生するのが現状だと思います。  ストレスチェック制度も、メンタルヘルス対策も、基本的に自分から手を挙げてくれる人に対して対処することはそんなに難しいことではありません。まずは、手を挙げてくれた社員としっかり向き合い、対応することが大切だと思います。
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メンタルヘルス問題の解決に向けて
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不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣

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