「みんなに謝罪してください」
とある精密機器メンテナンス事業を行う会社の朝礼での出来事です。
専務に謝罪を迫られているのは営業課長のFさん。話によると、このFさん、女性の派遣スタッフに対し日頃から横柄な態度を取り、また、セクハラと思われるような言動を行っていたそうです。Fさんは女性スタッフに直接謝罪をし、「今後は改めてくれるならば」ということでその場は収まったのですが、本件の報告を受けた専務がたいそう腹を立て、「全社員に対して謝罪をするべきだ」となったそうです。
針のむしろに座る思いをしたFさんはその後体調を崩し、退職したそうです。この話はこれで終わりではありません。ほどなくしてFさんから会社に対して「パワハラを受けて退職せざるを得なくなった」として、あっせんが申し立てられたのです。“セクハラ”は確かに問題行為ですが、それを注意や処分することも適切に行わなければなりません。
“悪を成敗する”といったようなスタンスで指導をしていると、それ自体“行き過ぎた指導”となり、パワハラとなってしまうのです。セクハラやパワハラを取り締まるはずの第三者がパワハラの加害者になってしまうこともあるのです。
セクハラ、パワハラ以外にもマタハラ(マタニティ―・ハラスメント)やアカハラ(アカデミー・ハラスメント)、煙草の煙に対するスモハラや臭いに対するスメハラ(スメル・ハラスンメント)など多くの◯◯ハラが増えました。とはいえ、今は少しでも不快な事があると「それって◯◯ハラだよね」と何でもかんでもハラスメントに結び付ける人が多いような気がします。相手に対してハラスメント認定をすれば、「何を言っても許される」とでも思っているのでしょうか。
例えば、スメハラ。強烈な香水を使用していたり、悪臭を放つ食材などを持ち込んでいるのであれば「スメハラである」と注意しても良いでしょう。しかし、体臭のように本人の意思に関わらないものまでもハラスメントとして糾弾するのは問題です。その糾弾する行為そのものがパワハラとなる可能性があるのです。
また、なんでもかんでも「それ◯◯ハラ」と言ってレッテルを貼る行為もそれ自体がハラスメントになるかもしれません。まさにハラハラ(ハラスメント・ハラスメント)と言っても良いでしょう。自分は冗談で「それって◯◯ハラだよね」と言っても、本当にそうなのか判断するのは言われた方です。“ハラハラ”にならないように注意しましょう。