2016年、ヒラリー・クリントンが主要政党初の女性大統領候補となったのと同時に、クッキー・コンテストの意義を疑問視する声が高まりました。かつての「ファースト・レディのクッキー・コンテスト」に、男性であるビル・クリントンが参加を余儀なくされたからです。
ヒラリーが史上初の女性大統領に就任すれば、夫のビルは史上初の「ファースト・ハズバンド」となります。男女の立場が入れ替わることにより、「大統領の伴侶」が果たすべき責務も、根本から見直されるのは必定です。
歴代のファースト・レディには、大統領の公務においてホステス役を務めるという、重要な役割がありました。会食の際にテーブル花や食器を選んだり、ホワイトハウスのクリスマス・ツリーを飾り付けるなど、ファースト・レディたちには常に「アメリカ家庭の模範的な主婦像」が求められてきたのです。
ヒラリー・クリントンの出現は、伝統的なファースト・レディの概念を覆しました。陰ながら夫を支える家庭的な妻ではなく、弁護士としてのキャリアを武器に、堂々と政治の表舞台に躍り出る大統領夫人の存在は、新時代の到来を思わせました。そのヒラリーがきっかけを作って、クッキー・コンテストという保守的な慣習が生まれたのは、皮肉といえば皮肉なものです。