モンサントはGMOの分野では世界トップ企業であるが、同社の主要品目である除草剤のラウンドアップのパテントは2000年に切れて、競合生産業者が既に70社以上存在しているという。しかも、モンサントはシンジェンタのように除草剤、殺虫剤、防カビ剤など幅広く製品ラインを揃えていない。その為、モンサントにとってシンジェンタの買収は商品のラインアップを広げる意味でも理想的であった。しかも、同社のラウンドアップに対して抵抗能力をもった雑草も生まれていた。それが同製品の需要の減少を生んだ。さらに、国際がん研究機関(JARC)からラウンドアップが含有するグリホサートが発がん性のあることが指摘された。同社のこれまでの戦略は一定の商品に集中するということでもあったから、稼ぎ頭のラウンドアップの需要の後退は同社の経営を苦しい立場に置くことになった。その様な状況の中で、シンジェンタが買収を拒否し、中国加工集団がシンジェンタを買収するという事態が生じた。モンサントはこの買収の失敗から経営の立て直しとして3600人を解雇している。(参照:「
agrovoz」)
スイスに本社を構えるシンジェンタがモンサントからの誘いを拒否した理由は明確にされていない。しかし、モンサントがこれまで辿って来た社歴から、モンサントはこの業界で汚名を着た企業として知られており、ヨーロッパでは評判の悪い企業であるということもシンジェンタがモンサントからのアプローチを拒否した可能性もある。
結局、モンサントはシンジェンタを買収する代わりにバイエルによって買収されることになった。バイエル医薬品は同社の49%の売上を占め、素材化学事業は26%で今後はコベストロという別会社にして発展させる計画をもっている。そして、<農業化学品の売上は22%>で、この事業をさらに発展させたい意向をもっている。そこで、バイエルが目を向けたのが、モンサントの買収であった。モンサントが抱える汚名は買収後にバイエルは<モンサントの社名を削除する意向があるようだ>と予想されている。(参照「
ETCグループ」)